覇王伝__蒼剣の舞い1
「蒼龍だぁ〜!?」
通称レオことレオンシャークが、王城に響き渡るような声を上げた。
「ああ」
「おい、小龍。理解ってんのか?蒼龍だぜ、蒼龍。あのガキが目指しているのは」
「そんなに怒鳴るなよ」
「で、どうすんだ?引退して、王様家業に本腰入れるか」
「あんた、暫く会わねぇうちに嫌味な男になったな」
「どっかのクソガキと八年もいた所為だろうさ」
清雅のいる前で、蒼龍候補を志願したリョウ・オン。星宿も焔も狼靖も、そして拓海も唖然とする一方で清雅を見た。
切欠は、例の偽情報(デマ)に始まる。
内の間者(スパイ)を誘き出す為に、蒼国中に広めた清雅再起不能の噂である。
ある意味成功し、ある意味失敗であった。
敵は混乱し蒼国の勝利に終わったが、目当ての間者は現れず、何れ冷めるだろうと放っておいた噂をリョウ・オンは未だ信じているのである。
しかも、彼は“蒼龍の清雅”の名は知っていても、顔は知らない。
レオが「小龍」と獅子の隊在籍時の名のままに呼ぶ所為もあって、リョウ・オンに目の前の男が憧れの男だとは理解らなかった。
「そこで、あんたに頼みがある」
「まさか俺にヤツを追い出せって?」
「いや」
そう云って、清雅はニッと嗤った。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍