覇王伝__蒼剣の舞い1
「ちょっと、清雅っ。よくも置いていったわね!!」
聞き慣れぬ女性の声に、拓海の思考回路の迷走が始まる。
焔以上に赤い髪に、力のある声。自由戦士のごとき軽武装の女性は、入るなり清雅に噛み付いた。
「置いていった?ついてこいとは云ってないぜ」
「本当に可愛くない子…!」
「…凌姫さま…?」
「あらぁ、星宿。暫く見ないうちに男前になったわね」
「凌姫さまも、お変わりなく」
「ねぇ、こんな所よりうちに来ない?清雅より倍額でどう?」
「やめとけ、こき使われるぜ」
「お黙りっ」
「星宿さま、この女は__」
「あらぁ♪可愛い、坊や」
お色気たっぷりに見つめられ、拓海は真っ赤になった。
「凌姫さま、彼は玄武さまのご子息の拓海です」
「狼靖の?ふぅん…」
バサッと長い髪を乱暴に、彼女は掻き上げる。
___あ…。
「どうかして?」
「いえ…、清雅さまもよくそうやるものですから」
同じ癖を。
「そりゃぁ似てるでしょうね。清雅は、私の異母弟(おとうと)よ」
「はい?」
「拓海、凌姫さまは前覇王陛下の御息女だ。そして紅華国の紅王陛下」
「父上」
入ってきた狼靖が、拓海の横に立った。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍