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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 「でも、紅華は…」
 蒼国に攻めてきたじゃないかと言いたげな息子を、狼靖はそのまま紅王・凌姫を見続けた。
 「こんなに早く、動かれるとは思いませんでした」
 「叔父が白碧に捕まったりと、こっちも危なくなったのよ。それに、私には責任があるもの。15年前から」
 「玄武さま、もしかしてこの間蒼国外を出られた用とは…」
 「凌姫さまにご協力をお頼みにな」
 「やはり、あんたら組んでたか」
 「嫌な言い方。他に言い様はないわけ?清雅」
 「フン、それで人を巻き込んだじゃねぇか。何故狼靖が、蒼剣を持っていたか。あんただろう?渡したのは」
 「そうよ。黒抄の義兄と、白碧の義弟に渡したくなかったの。どうなるか理解っていたから。お父様も、二人の性格を見抜いてらしたわ。そうよね?狼靖。だからそれならいっそ、狼靖の方が、と思ったのよ。唯、まさか清雅、あんたに渡っていたなんてね」
 「いい迷惑だぜ」
 「ほんと、どうして蒼剣はこうも無欲の人間が好きなのかしら。蒼剣があれば、覇王になれるのに」
 「俺はそのつもりはねぇ。欲しかったらやるぜ。あんたも覇王の血を引いてるんだ。女だからって遠慮したか?」
 「生憎、私も覇王に興味はないわ。唯、あの二人が覇王になるのは我慢できなっただけ。そうなったら、この四国がどうなるか理解るでしょう。それに、蒼剣は自ら、その“資格者”を選ぶのよ。蒼剣は、黒王でも、白王でも、私てもなく、そして狼靖でもなく、貴方をその“資格者”に選んだ。それが何故なのか、恐らくあの二人には理解らないわね」
 蒼剣の為に揺れた覇王家、疑心暗鬼と対立でついに崩壊した覇王家。
 黒狼、聖蓮どちらが継いでも四国はどのみち揺れる。前覇王・蒼龍王が危惧したままに。
 唯一人、凌姫は二人の性格を見抜き、蒼剣を密かに狼靖に渡した。
 蒼剣が自ら主を選ぶと知るのは、それからずっと後のことだ。
 父の目指した理想の四国、それは蒼剣の想いと同じ。覇王家にあっても、蒼剣はあの二人を選ぶ事はなかっただろう。
 七年経って、凌姫はそれを確信する。
 だからこそ___。
 「狼靖、この間の返事をするわ。紅華国主として、蒼国に協力すると」
 「紅王さま」
 「どう?強い味方でしょ。清雅」
 「あの二人に睨まれてやろうなんて、普通は考えないぜ。云っておくが自分の身は自分で守れよ。炎の女帝の名が泣くぜ」