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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 蒼国王城では、いつもの賑やかな光景が戻っていた。
 「つまり、偽情報(デマ)を流したのは__」
 「はい、吾です」
 にっこりと、尚武が嗤う。
 「尚武さまが何故」
 「その尚武さまというのはやめてください。今の私は一蒼国民です。拓海さん」
 人の良さそうなこの穏和な青年が、今回の騒動の裏にいたのを知ったのはついさっき。
 清雅がもう剣を握れないと医者に言われたと、尚武は噂を広めて回った。当然、蒼国は揺れ、四獣聖ですら信じた。
 「唯、思惑とは外れてしまいましたが」
 尚武は、それを命じた男に視線を流した。
 一人離れ、腕を組み壁に凭れている男。
 蒼銀の四獣聖・蒼龍の甲冑に身を包んだその男は、ふっと嗤った。
 「まぁな」と。
 「清雅さま、誘き出したかったのは別の人物ですね」
 「別の人物?」
 「白虎、お前も気づいていたな」
 「何となくですが。こうも敵に、こっちの動きを掴まれると疑わざるを得ません。何処かのスパイの存在を」
 「ちょっ…、星宿さま」
 慌てる拓海に、さすが四獣聖は冷静だ。
 「この機会に、俺の前に現れると思ったんだが。フン、そう簡単にボロは出さねぇって、か」
 腰まで伸び放題の髪を掻き上げて、清雅は鼻を鳴らした。
 紅華国が攻めてきた___報せを聞いた清雅は、尚武に噂を流させた。
 勿論、偽情報で吊る相手は紅華でも白碧でも黒抄でもない。彼らの裏にいて、情報を操作している人物だ。
 清雅が一人になるであろうこの王城に、その人物を誘い出す。そうなる筈だった。
 蒼剣も、清雅の命も欲しい彼らにとって、この機会を逃す事はしないと。
 「でも、状況は悪化しました。紅華国まで蒼国の敵に回りました」
 それでも、清雅は嗤ってる。
 どこからそんな余裕が出るのか。
 拓海が、唖然とする中、扉が勢いよく開いた。