覇王伝__蒼剣の舞い1
しかし、状況は蒼国の圧倒的不利に変わらない。清雅を欠き、実戦から遠のいていた狼靖、更に実戦経験ゼロの蒼国軍。実際に数十人の白碧・紅華連合精鋭に対し戦えるのは、白虎の星宿と朱雀の焔の二人のみ。
最悪なのは、白い影と呼ばれる白装束の男たちは剣では切れなかった。
「蒼国も、終わりだ」
「それはどうかな。蒼王さまは諦めが悪い方でな」
「フン、その蒼王ももう剣が持てぬと云うではないか。それでもか?白虎よ」
「それでもだ」
星虎は、押されながらも剣を交わした。
『___諦める?冗談きついぜ。未だ終わっちゃいねぇんだよ』
___清雅さま。
彼と四獣聖として組んだ最初の頃、弱気になりかけた星宿を年下の清雅が奮起させた。
思えばあの時からだ。
四国を背負うのは、彼だと。蒼剣の選択は、正しい。
だから。
「焔、へばっている暇はないぞ」
「白虎さま、僕が四獣聖の朱雀だって忘れてない?誰かさんの影響受けちゃってる所為か、こういうの燃えるんだよねぇ」
その誰かさんは、ここにはいない。
「…まける」
「タクちゃん、そう簡単に諦めるなって」
「でもあの白い人たち、剣じゃ…」
「斬れるよ。彼らの衣を切れる剣が」
視線を泳がせた焔が、「嘘…」と呟く。
「よそ見とは、いい度胸だな!」
「焔さま!」
「この勝負、もらったぁ!」
カンっと宙に火花が散る。
焔の剣“鳳凰剣”が、炎を纏って相手を倒す。
それだけではなかった。
星宿の“虎牙星”の剣も風を起こし、狼靖の“亀甲文殊”の剣も手こずっていた白い衣を引き裂いていた。
何が起きたのか、拓海には理解らない。
さっき、焔は何を云おうとしたのか。
「蒼剣だ」
「え…」
「また蒼剣が目覚めた」
狼靖が見つめるその先は、さっき焔が見て呟いた場所。
「___蒼龍王…!?」
レオも驚きの声を上げる。
蒼い光の中、その男は剣を握り締め、そこに立っていた。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍