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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 北の北国(ほっこく)街道、西の西国(さいごく)街道、南の南王(なんおう)街道、そして蒼国に伸びる東の東海道である。
 「あんたたち、剣士かい?」
 「ええ。あなた達も?」
 「もうすぐ戦になるからなぁ。ま、蒼国に勝ち目は先ずないって話だ」
 「そうなの?」
 「まさか知らないで、蒼国に?現今の四獣聖は、駄目だって話だ。玄武はとっくに引退してるし、蒼龍は…」
 男の声は、そこで言い淀む。
 「何かあるの?」
 「いや、何日か前に黒抄と戦って負傷したらしいんだが、数日前に悪化してもう剣は持てないとか…」
 「冗談じゃないわっ!!」
 「凌姫さまっ!」
 何を怒ったか、凌姫は馬を走らせた。
 ___話が、全然違うじゃない…!

 戦になる___、その噂は蒼国中に広まっていた。
 相手は、南領・紅華国。
 これまで、動く気配のなかった紅華国の突然の動きは蒼国にとって意外であった。
 今度こそ、蒼国は駄目かも知れない。
 四獣聖崩壊という更なる噂が、蒼国を倒すという黒抄、白碧を喜ばせた。
 その蒼国王城で、重臣たちの顔は青白く、策に窮していた。
 「___ここは何としても、白虎、朱雀どの二名で防いでもらいたい」
 「できるな?」
 「はい」
 白銀の鎧と云う白虎の正装に身を固め、銀髪の青年が膝をつく。
 「ちょっと、白虎さま。本当に僕たちだけ?」
 「いや、他にも蒼国軍がいる。だが、戦の経験はゼロだ」
 「最悪」
 「それでもやらないといかん。それとも朱雀とあろうものが怖じ気づいたか?」
 「あ、云ったね。僕の剣捌き、見せてやるよ」
 赤と橙の甲冑という朱雀の正装の焔は、やはりこんな時も脳天気ぶりを発揮していた。