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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 「…ちょっ、清雅さま。どうして来たんですっ。命を投げ出しているのは清雅さまじゃありませんか!?」
 「こんな時に、口の回る野郎だな」
 同じ台詞を、刺客にも言われたばかりだ。
 「しかも、馬に乗れるなんてさすが四獣聖」
 「お前がどんな理想を描いていているか知らねぇが、乗馬は俺しかできない」
 「へぇ…、はい?」
 「ま、四獣聖は馬になんか乗る必要ねぇからな。俺は、子供の時から移動は馬だったしな」
 刺客の剣を交わしながら、清雅は拓海と物陰に飛び込んだ。
 口が回るのは、寧ろ清雅である。
 呆れている拓海の視線が、すっと逸れて凍り付いた。
 清雅の右半身が、真っ赤に染まっていたからだ。
 新たな傷でも、返り血でもなく、それは___。
 「清雅さま…っ!!」
 「馬を飛ばした所為で傷が開きやがった…。もうすぐ、白虎と朱雀が来る。そうしたら、迷わず向かえ。いいな?」
 「でも清雅さま!」
 「来た。走れっ!!」
 その二人は、猛速度で荷馬車で登場した。
 「タクちゃん、生きてるぅ?」
 朱雀の焔は、所々擦り傷だらけであった。
 「朱雀さま、来るまで何があったんですか?」
 「聞いてよ。白虎さま、酷いんだ!公道は安全運転って習わなかったんじゃない?」
 「白虎さま、清雅さまを早く…っ」
 「タクちゃん、僕がいるの忘れてない?」
 よほど荷馬車で揺られて、あちこちぶつけた焔は憤慨しているが、戦いとなると四獣聖本領発揮と云わんばかりにひらりと跳躍しては倒していく。
 「…早かった…じゃねぇか…」
 「かなり飛ばしましたので。ですが、まさか荷馬車を扱うとは思ってませんでしたよ」
 「帰ったら、尚武に文句云うんだな…」
 肩で息をし、きつく負傷の半身を押さえ、清雅はこんな時も嗤っている。
 そんな彼らの渦に、数人加わった者たちがいた。
 黒抄の者でも、蒼国の者でもない。
 大柄な体躯の初老の男と、数人の自由戦士。
 「あんた…」
 見上げる清雅が、驚きの表情をする。
 「よぉ、七年ぶりだな。小龍(しょうりゅう)」
 「___レオ…なのか?」