覇王伝__蒼剣の舞い1
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拓海は、何も知らぬまま嘗て父・狼靖と暮らしていた邸の近くにいた。
___お前は城の中にいた方がいい。
狼靖に云われ、蒼国に来てからは城にいた拓海だがそれは刺客から逃れる為だ。
だが、息子として彼は一人邸にいる狼靖が心配になった。
まさか、この王都で狙われることはない。そう信じて。
だが。
「___玄武の息子か」
「あ…」
黒ずくめの男たちに、拓海はあっという間に包囲されていた。
「父親はどうした?まぁいい。まずは、蒼王の首と蒼剣だ。お前には人質になってもらうぞ。父親より扱いやすいからな」
「…本当にしつこいですね。嫌われますよ」
「黙れっ。クソガキ」
何処かで聞いたような台詞だと拓海は思った。
「清雅さまは来ませんよ。あの男(ひと)はとても動ける状態ではないんです」
「よく口の回るヤツだな」
「そんな怖い顔したって怖くありませんよ。慣れてますから」
隙を見て逃げ出す作戦を考えて、拓海は何とか冷静を保った。
つくづく、自分の警戒心のなさを嘆かずにはいられない。
「このガキっ…」
男は剣を振り上げた。
挑発し過ぎたのだ。
敢えなく、隙を見て逃げ出す作戦失敗。
「___簡単に、諦めんじゃねぇ!」
「え…?」
馬のいいなきに重なる声に、拓海は振り返った。
「ふん、やはり来たか」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍