覇王伝__蒼剣の舞い1
___逃がすな。あの女は間違いなく蒼剣を持っている。探せ、何としても…!どんな手を使っても構わん。
黒狼の叫ぶ声が、響く。
桜は走った。幼い息子の手を引いて。
背後に迫る、黒狼と義勝。
「渡せ、その剣をっ」
振りかざした剣が、迷うことなく振り下ろされた。
母の叫びと同時に。
何故?
剣一本の為に、何故?
薄れ行く意識の中で、幼い清雅の問いに答える者はなかった。
「清雅さまっ!」
「…っ!!」
星宿の叫びと同時に、鮮血が乾いた地を染めた。
勝負は互角の、相撃ち。
「さすがだ」
「フン。また…トドメを、ささねぇのか?俺は…、執念深いぜ…」
「それは、こっちも同じだ…」
義勝は、利き手を痛そうに押さえ馬に跨った。
「清雅さまっ」
振り返る清雅の目に、飛び込んでくる白虎、朱雀、そして___玄武。
いつのように嗤うその筈が、彼の躯は大地へと崩れ落ちる。
あの頃と違ったのは、彼には助けに来てくれる仲?がいた事だ。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍