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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 蒼国・王都では、何も知らない朱雀の焔がいつもようにフラフラと王城に清雅を求めてやってきていた。
 当然会えるわけがなく、出て行こうとした時に前からやってくる二組を見咎め、嬉しそうに顔を綻ばせた。
 「タクちゃんっ♪」
 「…朱雀さま」
 いつも間にか『タクちゃん』と呼ばれている事に、拓海はげんなりとした。
 「酷いよ、タクちゃん。この僕を避けるだろう」
 「そんな事ないですよ」
 「___タクちゃんさぁ、顔に直ぐでるしィ」
 返す言葉がない。
 昔から、何人かに云われたことがある。嘘はつけない正直者、よく云えばそうだが。
 「ま、いいけど。玄武さま、セイちゃんの所に行くつもりなら連れて行ってくださいよ」
 「いらっしゃらないのか?」
 「いつものアレだよ、また。放浪癖は、直らないね」
 「何処に行かれたのだ?」
 「まさか、知らないんですか?牙の村だそうですよ」
 「な…に…」
 「父上?」
 それは、拓海が初めて見る父・狼靖の表情であった。
 「牙の村は___、清雅さまが生まれ育った所だ」
 そして、全てが始まった場所。
 蒼剣と云う一振りが、人の運命さえも変えてしまう切欠を作った場所。
 『なぜ、もっと早く…、もっと早く来てくれなかったんだ…!』
 七年前、清雅の放った悲痛な叫びは今でも狼靖は昨日のように思い出す。
 狼靖が、駆けつけた時、牙の村は変わり果てていた。
 数日前に訪ねた美しく平和な村は、炎に包まれ、妹・桜の亡骸と対面した。
 そう、もっと早く駆けつけていれば。
 吾は、妹も救えず四獣聖の資格などない。
 共にいたであろう、妹の子はそれから8年間、行方が理解らず、自由戦士として戦場で再会する事になるのだ。
 そして、彼に蒼剣を差し出した時、狼靖は全て知るのだ。
 桜が何故、殺されなければならなかったのか。
 どうすれば、この思い贖罪を晴らせるのか。
 故に、剣を封印し玄武を退いたのに。
 いや。そうではない。
 自分は逃げたのだ。清雅の云うとおり、何もかも彼に押しつけて。
 「朱雀、牙の村へ行くぞ」
 「了解っ♪」
 どこまでも脳天気な青年は、弾んだ声で敬礼した。