覇王伝__蒼剣の舞い1
___俺は、あんたも許しちゃいねぇ…。
狼靖に放った清雅の言葉は、未だに拓海の躯を堅くする。
「父は、何も話してくれません。唯、恨まれて当然だからと」
「拓海、清雅さまは心から玄武さまを憎んでいないと思うよ。だったら、君たちを単身助けに行かない」
黒抄の刺客に二度も襲われた狼靖父子、その二度とも清雅と星宿に救われたが、あの時真っ先に飛び出したのは清雅だったという。
「では何故___」
「それは多分___」
拓海を見つめる星宿の言葉が、そこで止まった。
「星宿さま?」
「いや、君を見ていると清雅さまを思い出してね。ま、従兄弟だから似ていてもおかしくないんだが」
嬉しいような哀しいような。
「僕はあそこまで性格悪くありませんよ」
「やっぱり似ているよ。少なくても、吾が初めてあった清雅さまにね」
「いつなんですか?」
「朱雀には聞かれたくないな。喜んで飛びつくから。十歳の清雅さまなんて」
「十歳っ!?」
拓海の思考回路の迷走が、再び始まる。
どう考えて、どう結べは現在の清雅になるのか。
「そう、狼靖さまと清雅さまの母上に会いにね。驚いたよ。再会した時には完全に現今の清雅さまに出来上がっていた。当時の面影なんて微塵もなかった」
「その間に、何かあったんですね」
「だろうね。吾以上に玄武さまが驚かれたよ。養父と云っても、一緒に暮らしていたわけじゃない。唯、清雅さまは玄武さまの前から八年間姿を消されていたそうだ。その間に何をしていたか、知っているだろう?」
「確か、各地を転戦と父が」
「そ。あの方の腕は実戦で鍛えたもの。この蒼国が誕生する前は、東領は夜盗や黒王の軍があちこちでやっていたからね。子供の時から死線を潜っていれば力はつくけど、本気でいかないとマジでやばい。稽古だろうと容赦はしないよ、あの人」
「肝に銘じます…」
白虎の星宿も認める最強の腕、清雅。
拓海は、何故かもっと彼の事が知りたくなった。変わっているのは、彼の従弟だろうか。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍