覇王伝__蒼剣の舞い1
「須黒さま、蒼国の密偵より知らせにございます」
「ふふ、出てきたか」
「はい。玄武を襲わせましたところ、一人で現れたと」
「変わっとらんな、七年前と」
「如何いたしましょうか?」
「彼らにやらせる」
「しかし、それでは」
「黒抄の刺客などに、蒼王には殺せぬ。誘き出してやったのだ。それで黒抄に恩は売ったと思うが?」
白碧に、端から黒抄と手を結ぶつもりはなく、須黒は今度も清雅暗殺が失敗に終わることを知っていた。
加勢に駆けつける事は容易いが、白碧の精鋭を連れて行くことはできない。
蒼国を白碧も狙っていると知れば、ますます四獣聖の守護力に二国共倒れになる。
___それを、あの黒王は知らないのだ。清雅の力を。
須黒は、馬に飛び乗り白碧への帰路に馬を向けた。
その清雅は、黒抄の刺客と応戦中である。
拓海も否応なく剣を持たされ、危なっかしくも巻き込まれている。
「なかなかやるじゃねぇか、玄武の息子」
「その“玄武の息子”ってやめてくれませんか?」
「じゃ、半人前」
より酷くなってる。
「随分余裕ですな?蒼王さま。こんな時に」
嫌味たっぷりの刺客の長に、清雅はニヤリと嗤った。
「相手が雑魚どもで退屈なものでな。これじゃぁ、剣の稽古にもならねぇ」
「…な…!」
「俺を殺るなら、もっと腕の立つやつを用意するこった。いつでも相手してやるぜ」
「云わせておけば…っ」
早く退散して欲しい拓海の思いに反して、背を突き合わす男はかえって刺客たちを煽っていた。
確かに、剣の腕と口では刺客には勝っていたが。
この一夜の騒動は、翌朝にはもう蒼国中に知られ、拓海は時の人になるのである。
玄武の後継者として__。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍