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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 その清雅は、白碧の怪しい動きに気づいてはいなかった。
 一月ぶりの帰還___これが、蒼国建国当時からの重臣たちの怒りの導火線に火をつけた。
 「___それで、賊を追い領内を出られ、挙げ句には黒抄の刺客と一合戦ですか?陛下」
 「黒狼の刺客と鉢合わせしたのは計算外だったぜ」
 「だった、ではございませんっ!貴方は四獣聖・蒼龍ではいらっしゃっても、この国の王ですぞ。それに、貴方さまは命を狙われております。領内に出られる事は今後はおやめ頂きたい!」
 「俺は王に拘るつもりはねぇ。いつでも愛想尽かしてくれていいぜ。元々、玄武とお前たちが、勝手に俺を王に担いだ。前覇王の子だと騒いでな」
 「事実にございます。玄武・狼靖どのの妹君は前覇王陛下の寵を受けられ、貴方さまを生まれました」
 「その時に、下賜されたのが龍王剣だと云うんだろうが」
 「はい。貴方さまが御所持になっている四獣聖・蒼龍の剣。しかし、事情が変わりました。覇王陛下が亡くなられ、国は分断し、この東領は他御三人の支配を拒んでいました。それが何故か、蒼王陛下は御理解になるかと」
 もし、前覇王が四国の次の覇王を決めていたらどうなっていただろうか。
 いや、彼には決められなかったのだ。嫡男・黒狼は残酷な性格、次男・聖蓮は良くも悪くも何を考えているか理解らず、清雅は未だ当時十八の若さである。しかも、一度も顔を合わせていない。
 更に、覇王を決めるのは蒼剣と呼ばれる一振り。
 子供たちに、使いこなせるかは前覇王には理解らなかった。故に、後継を決めなかった。
 蒼国の人々は、黒抄、白碧の両国から何度攻め込まれたか、その護りに清雅は白虎の星宿(せいしゅく)と共に剣を振るっていた。蒼国にも王が必要だった。それは理解るが___、清雅の気に入らないのは誰もがその一振りの蒼剣に振り回されている事だ。
 覇王の死後、主を失った蒼剣は玄武・狼靖によって隠され、七年後に再びこの世にその名を轟かせた。
 蒼剣は主を自ら選ぶ___その通りに。
 その瞬間、人々は確信した。彼こそ、自分たちの主だと。
 蒼剣が認める強き王___蒼王・清雅はこうして誕生した。