覇王伝__蒼剣の舞い1
蒼国・王城は尚武の邸からそんなに遠くない位置にある。七年と云う建国の歴史によりも古い造りの城は、前覇王が築城した一つだという。
その門前で、王城衛士が勢揃いしている。
「凄い出迎えだね」
「白虎さま、ご無事のご帰還何よりにございます」
「まさか、四獣聖を出迎える為のものじゃないだろう?」
「はい。我が王、蒼王陛下の出迎えです」
「蒼王陛下っ?」
思わず声を跳ね上げたのは、拓海であった。
「何者だ」
「あ、僕は…」
「玄武の息子だ」
衛士の問いかけに答えたのは、いかにも不機嫌そうな男の声だった。
少し日に焼けた肌に、背まで流れる癖のある髪、どう見てもこの場に相応しくない怪しげな風体に、衛士は思わず腰の剣を抜いていた。
「誰だ…」
「ったく、瑠邑の奴、こんな出迎えしやがって…」
すっかり癖になった仕草で髪を掻き上げる男に、衛士の視線はゆっくりと彼の腰に伸びていく。
柄に巻き付く蒼い龍の細工、それは四獣聖・蒼龍の剣であることはすぐに理解る。
次の瞬間、衛士の顔は青ざめた。
「___蒼王陛下っ」
はぁっ?!
拓海が同時に、驚く。
清雅は、蒼国の国主・蒼王だったのである。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍