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ウエストテンプル
ウエストテンプル
novelistID. 49383
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ナイトメアトゥルー

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ほら、私を含めたみんなが誤解していると思って事実を確認したかったの。
ですから…。
あ、ほら、追浜さんて男の子からすごく人気があるから伊達君が変な嫉妬を買っていたら、私が訂正してあげようと思って、だから直接伊達君に聞きたかったの」

なるほど、これじゃ言いにくいな。
委員長としての責務を果たそうとしていたんだな。

「それに、もしかしたら追浜さんが伊達君からいじめられていると思って。」
ここは、少し悪戯ぽく彼女は言った。

どうやら融通が利かないことはないらしい。
多少のジョークのスキルもあるようだ。
真面目っ子特有のマニュアル人間かと思ったけど杓子定規で全てを決める子では無さそうだ。

でも、女子同士の噂の広まりは怖いな、客観的な事実だけでここまで話が膨らんでしまうのだから…。



昼休みになった。
今日もまた追浜が声をかけてきた。

「今朝は、お母さんが自分休みなのにお弁当作っちゃって…勿体ないから持ってきた。」
手には二つの弁当箱。
しかし、今日は声のトーンが少し落ち着いている。
けれども、舌の根が乾かぬ内に言葉が飛んできた。
「ねぇ…、今日は一緒に食べよ。
あ!勘違いしないで、いすみんいつも一人で食べてるじゃん。
だから、可哀そうだと思って。
それに、今日、麻里とユキも休みだし。」
と、今日も俺を指差した。

追浜は、「勘違いしないで~」はクラス中にいる全員に聞こえるような声までトーンを回復させていたが、指差す力はどこか弱々しく見えた。


さて、会話の中で出てきたユキとは、入学式後の教室で印象に残った見た目が小学校中学年か高学年ぐらいのツインテールの女の子である。
噂によるとその外見で姪がいるらしい。
しかも、血の繋がっていない兄もいるらしく、その兄は中学の頃はダブルドラゴンたる向かう所敵なしのコンビの一角を担っていたらしい。
その兄が姪の父親らしい。
らしいのオンパレードなので、ここで確定情報を混ぜ込みたい。
そのユキという女の子の苗字は工藤で、追浜はいつも佐藤 麻里と工藤 ユキこの二人と昼飯を食べている。
そりゃ、仲良い友達が二人も休んだら昼休みの過ごし方も女子的には死活問題であろう。
ここは広い心で受け入れなければ男が廃るってもんだ。

あれ、でもあの朝の黒いツインテールは一体誰なんだ?
てっきり工藤 ユキだと思ったのだが。
背的にもあの子だと確信があったのだが……。
あ、そうだ、因みに言っておくと、いつも俺は一人で昼飯を食っているが別に友達がいないわけじゃない。
最初の方こそは、地元の共通した話題に入れず人間関係構築に苦労したが、一通り男子のクラスメートの携番とアドレスはメモリに入っている(尤も携帯を持ったのが高校になる前の春休だったことに加え引っ越したこともあり地元の友達の個人情報を得られずにこっちに来てしまったため、電話帳はクラスメートの男子だけである)。


こうして築いた新生活の人間関係であるが、一番仲が良い奴は待瀬についての話を聞かせてくれた奴なのだが、そいつは昼休みになると部室に行ってしまうため、自然と俺は一人になってしまう。

追浜は考え事をしている俺に構う事無く語りかけてきた。
「どうしたの?何かぼーっとしてるけど?」
顔が近い。
唇に目線が行ってしまう。
今の大きさだとこんなに小さな唇なのに…。
「ん?何かな?」
追浜は首をかしげる
「あ!いや、昨日の夜寝れなくて……。」
嘘八百だ。
{寝てない}とは、物事が出来ない人間がする典型的な言い訳だからしたくない。
でも、あんな{夢}を見ていれば寝ていないと同じ体調になるのも無理は無い。

「そうなの?実は、私も何か寝れなくて…。ううん、寝れてはいたんだけど、少しばかりか妙に現実的な夢で…。」

おいおい、偶然だな。まさか同じ夢でも見ていたってのか?
だが、その夢の内容を聞くことの勇気は無かった。

場をごまかすため、上を指差す。
「とりあえず、屋上に行くか。」
「うん。」



階段を上がり屋上の片隅に座るまで互いの口数は少なかった。
そして弁当箱を開いて互いに「いただきます。」と言ってもそれ以降の会話が続かなかった。

ところでこれって…。
一緒に食べていることになるよね?
これじゃ朝の時に、待瀬に否定したことが否定できなくなるんじゃないか?
でも、恋人同士の食事ってもっと楽しそうに会話が弾むもんだろ。
しかし、今は楽しそうに会話が弾んでいない。
よって俺達は付き合っていない。
証明終了!!

……。
変なこじつけである。
……。

気を取り直し弁当箱の中身に目を移す。
弁当の中身は相も変わらずバリエーション豊富だった。
だが、昨日見た{夢}のこともあり、どうも美味しく感じない。
自然と箸が進まないし、追浜の口に運ばれる食べ物につい目がいってしまう。
また、追浜の余分な脂肪が一切ついていない下腹部に視線が定まってしまったりもする。
今、あの中では追浜に食べられた食物らがPH2の強い酸性の液体に揉まれ……。

ダメだ…。
自然科学的に考えてもどうしても性的興奮を覚えてしまう…。
どうやら俺には女性に対して被食願望があるらしい。
それにしても、こいつ腰や二の腕は細いのに胸はそこそこあるな…。

「どうしたの?食べないの?」
視線に気づくか気づいていないかのタイミングで追浜が箸を止めた。

その眼差しについ止めていた箸を動かす。
「あぁ、ゴメンゴメン…。
…。
あー、やっぱり美絵さんは相変わらず料理が上手だなぁーー。」

弁当箱の中身を無理に押し込む。
気の利いたことが言えない自分自身の若さゆえの過ちを認めたくないものである。

突然、追浜が箸を置いた。
その置いてからの時間が妙に長く感じる。
「ねぇ、やっぱり迷惑だった?お弁当持ってくるの?」

弱々しく消え入りそうな声だった。
「え…迷惑?何で?こうして美絵さんの美味しい手料理を食べれるのだから全然迷惑じゃないって!」

「そう。よかった。
でも、周りの目ってあるから。私たちって単なる幼馴染ってだけだし…」
追浜の表情は泣いているのか笑っているのか女性経験が無い俺にとってそれは図り知ることができなかった。

話題を転換したかった。
追浜の弁当箱の中に目を移すと1品だけが残されていた。
「それ、食わないの?確か、それ好きだったよな?」
追浜の弁当箱の中では切干大根だけが残されていたので指差す。
追浜が切干大根を好きなのは昨夜の{夢}の中で得た情報だ。
「なんか、夢の中で変な味がしたから…。」
追浜は弱く首を横に振るだけだった。
それ以降はまた会話は無い。
無言のまま弁当箱は片付け始められる。
片付けが終わるなり、
「明日は、お母さんにいすみんの分はいいと言っておくから。」
と、寂しげの表情で彼女は言った。

訳がわからなかった…。
だが、ここで(訳わかんねぇーよ!)と叫び、追浜を糾弾する気力も無かった。
それは昨日見た{夢}の内容も大いに関係している。
自慰を覚えたての頃、夜のネタにしてしまった女の子に対する気まずさのようなものを追浜に抱いてしまっていたこともあったのだ。
だから、
「………。あ…あぁ…そうか…。」