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チキンというやまい(更に改題)

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 河田雅人と石川可奈が旅に出ることになっていたその日の朝、目覚めると前夜の雨が嘘のようにやんで、明るい陽光に恵まれていた。その事実に感謝しながら彼は勢いよく起き上った。彼は中身の詰まった旅行用のバッグを持って出かけた。
直線の緩やかな登りの道を、なぜかやや緊張気味の河田は駅に向かって歩いていた。頭上の青空には白く眩い雲が漂い、新緑の街路樹を微かにそよがせる爽やかなそよ風が心地よかった。
 ふたりが出会ったのは、ほぼ強制的に全社員が参加させられる社内旅行のときだった。夜の宴会のときの恒例の企画で、カラオケをバックに連続してデュエット曲を歌うことになっていた。歌わせるメンバーを決めるために、男女それぞれが抽選をすることになる。その際にふたりは同じ数字を書いてあるカードを引き当てた。入社して間もない可奈と共に、河田は初対面でありながらデュエット曲を歌うことになった。不思議なことに宴会場では河田の隣の席に、偶然可奈が座っていた。
 その後、河田は社内釣り大会で可奈の姿を発見して喜んだ。更に社内の登山サークルでもふたりは顔を合わせることになった。
そして、間もなくふたりの交際が始まった。
それは、三十前の男女にしては不自然な交際だった。