漢字一文字の旅 第三巻
九の三 【椛】
【椛】、木偏に「花」、一体どう読むのだろうか?
これに類似したのが木偏に「華」の「樺」。これは白樺などの(かば)と読む。
【椛】はこの「華」が「花」に変わっただけ。同様に(かば)と読む。
また、秋になると木の葉は赤くなり、花のようになるから(もみじ)とも読む。
えっ、もみじが花?
そんなのどこまで行っても葉っぱじゃんと言いたくなるが、とにかく紅葉の(もみじ)なのだ。
余談になるが、木偏に「色」の漢字「木色」も(もみじ)と読む。
こっちの方がピンとくる気がする。
いずれにしても【椛】には訓読みの(かば)と(もみじ)があるだけで、音読みはない。
そんな応用がきかない【椛】だが……
ところがどっこい、最近の人気漢字なのだ。
赤ちゃんが生まれた。目に入れても痛くない可愛い女の子だ。
父母はどんな名前を付けようかと、必死のパッチでネットで調べる。
そのアクセス数が一番多い漢字、それが【椛】なのだ。
ところが【椛】の読みは(もみじ)と(かば)だけ。
そのためパパママは【椛】の字を使い、あーだこうだと悪戦苦闘。
その果てに百花繚乱、いや名乗りたい放題の命名をする。
椛(もみじ)はもちろんのこと、後は……
椛 (いろは)
愛椛 (あいか)
椛杏 (かなん)
結椛 (ゆうか)
瑠椛 (るか)
等々だ。
うーん、ちょっと読むの難しいかな?
それでも「木」の「花」の【椛】が咲き乱れる今日この頃だ。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊