漢字一文字の旅 第三巻
九の二 【棘】
【棘】、「朿」は先の尖った木であり、これが二つ並んで【棘】(とげ)。音読みでは(シ)となる。
薔薇に棘あり!
確かにそうだ。そしてこの忠告がさらに拡大され、「綺麗な花には棘がある」と言われてる。
これに反論する余地はないが、果たして薔薇の【棘】の真実はどうだろうか?
刺さればチクリと痛い。
しかし、昆虫などは棘の横をスルリとすり抜けるため、薔薇の花を守る役に立っていないのだ。
じゃあ【棘】は、何のためにあるの?
現代においても、これがよくわからないのだ。
それでも一説がある。
昔薔薇は高価でかつ貴重。栽培が出来るのは裕福な人たちだけだった。
そんな薔薇を盗みに来る薔薇泥棒から、薔薇が身を守るために【棘】を付けた、とか。
ホンマかいな、と言いたくなるが、薔薇泥棒はきっとイライラしただろう。
このイライラが草木の【棘】、すなわち草木のトゲの意味の「苛」(いら)を繰り返して「苛苛」(いらいら)となった。
とにかく【棘】、現代人のイライラに大いに繋がっていて、苛苛の代わりに、毎日棘棘(トゲトゲ)じゃ! と叫んでも気持ちは伝わるような気がするが……。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊