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双子エピソード

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ミレニアとレイス


なぜ、こんなことになったのか、わからない。
私はただ、現状を打開したくて、というよりどうにか今のこの不安な思いを消化したくて、つい、セナ様にこぼしてしまったのだと思う。
そのセナ様が、タトラ殿に打ち明けたのもわからなくはない。きっと私の事を想ってのことだろうし、タトラ殿もおそらく、そんなセナ様の気持ちを慮って、相談に乗ってくれたのだろうとは思う。あのお二人には、私などでは立ち入ることができないような、ごく近しい者独特の、絆があるようにも、思えるのだ。だから、私がタトラ殿の招きで、今日、旅人亭を訪れたまでは、全く問題はないし、感謝するべき事だったのだろうと思う。
イリアに求められ、答えられない自分を、自分自身が最も恥じていた。それを、どうにかしたいと思う心は嘘いつわりがない正直な気持ちだ。
だが、目の前に座る人物を前に、私はどうすればよいのか、途方に暮れていた。
「で、なんでオレがあんたの恋愛相談になんかノらなきゃいけねぇんだ?」
あからさまに不機嫌な顔で、至極もっともなことを言う目の前の青年。レイス殿に、私はなんとも答えることができず、助けを求めるように、後ろに座るセナ様とタトラ殿を振り返っていた。
「まあまあ、レイス。そうイライラするもんじゃないよ」
見かねたようにタトラ殿が頬づえをついて睨みつけるレイス殿をたしなめる。
「イライラするなっつったってな、だからなんでオレなんだ? よりにも寄って? お前らがノってやりゃいいだけだろ? なんでオレが巻き込まれなくっちゃいけねぇんだよ」
彼の態度は流石の私でも納得してしまう。そもそも、私はイリアに抱かれるためにはどうすればいいのかということを血迷って問いかけてしまっただけであって、レイス殿が巻き込まれる筋合いは何もないのだ。そもそも、何故自分の女としての悩みを、この青年に打ち明けねばならないのか。
「まあ理由はいくつかあるんだけどねぇ。あんたがほら、うちの周りじゃ一番、幸せな結婚生活ってもんを知ってんじゃないかと思ってね」
「んなっ! そ、んなっ、わけ、ねーだろっ!」
「照れなくてもいいだろう。お前とお前の旦那が仲睦まじいことは、このあたりでは至極有名だ」
「だ、だれが! あ、あんな奴!!」
さっきまでとても苛立った様子だったレイス殿が、タトラ殿とセナ様の二人によって、真っ赤になり、しかし怒り狂うわけでもなく、次第に反論の声すらしぼんで、小さくなって耳まで真っ赤にしながら元の席におさまる。
さすがの自分でも、わかる。これは相当、彼は自分の伴侶に惚れているのだろう。
たしか、ここのカップルは、そもそも性別や種族と言ったものをまるで飛び越えてしまっているのだったと、改めて、思いだした。
レイス殿は、もともとごくごく普通の人間男性であるはずだが、相手はこの世界の基礎となる精霊の長の一人だ。詳しい経緯はわからないが、そんな二人が共に生活し、家庭を築きあげているのだ。並大抵の想いではないのかもしれない。
「羨ましい、ですね。お幸せそうで」
つい、笑みがこぼれ、相手が片眉を跳ね上げてマジマジとこちらを見つめる。
しかし、何か反論しようとして彼は思いとどまって、むすっとした表情で明後日の方を見つめながら、つぶやいた。
「まあ、幸せじゃないわけじゃ、ねぇな」
どうやら、相手は相当、素直ではない人物のようだと、気付いた。
確かに、それがどうして今のようになったのか、そこは気になるところかもしれない。
「レイス殿、貴方のお時間を取らせて申し訳ないのですが、良ければ貴方の事を聞かせてほしい。それが、何か解決の糸口となるのなら……」
「んなまどろっこしいことしてられるか」
「それでは……」
「別に何もしてやらねぇとは言ってねぇよ。ようはあんたが、あのイリアとか言う奴に抱かれたいって思えるようになりゃいいわけだろ?」
「……っ、た、確かに、それは、そうなのですがっ、も、もう少しこう、そんな直接的な言い方では、なく」
「直接的とか直接的じゃないとか、んなことどうだっていいだろうがよ。オレはこんなめんどくせーことさっさと終わらせて帰らせてもらうからな」
「申し訳ない……」
「で? なんでそもそもできねーわけ?」
「そ、れは……」
「ミレニアはもともと男として育てられた。だからそもそもその手の行為には抵抗があるのだろう。それに、ある一件でトラウマもある」
「トラウマ? ああ、なんだ。あんたそういうこと」
「……っ」
「別にそんなこと気にすることでもねぇだろう」
「貴方に、わかるんですか……っ」
「わかるさ」
「え?」
「どうでもいいことだ。 初めてヤったのがどうこうなんて、どうでもいい。 それにイリアってやつは、別にそんなこと気にしねぇんだろう。だったら、別にいいじゃねぇか」
「それは……」
「あんたはいいじゃねぇか。そうやって、相手がいる。ちゃんと。あんたの意思も尊重してる。オレだったらお前みてぇなめんどくせぇヤツ、すぐに捨てるな」
「……。ああ、そうでしょう。私も、不思議でならない。なんで、イリアは私を見捨てて行かないのか」
「んなこと本人に聞けよ。けど、ムカつくなあんた。マジで。裏切らない、見捨てない。それで何で十分じゃない? なんでそれを受け入れようとしない? 贅沢じゃねぇ?」
「それは……」
「イリアって、あいつだろ。あのしょっちゅう女口説いてたちゃらんぽらん。それが、ほんとは一人しか見てないってんなら、オレなら絶対モノにしてやるぜ? それとも、奪ってやろうか?」
「な……っ!」
「冗談だ。あんたのモノまで盗るほど、オレは飢えちゃいねぇし」
「のろけか?」
「誰が!」
「一つ、私からも聞きたいんだが、お前のダンナも確か女ったらしのようだったが、そのあたりはどうなんだ? 私も奪ってやろうか?」
「元帝国の女主人相手だろうが、あいつはオレを裏切ったりしねぇよ」
「それが、お前がその精霊と共に居る理由か?」
「まあ、な。 あいつは、オレを裏切らない。それさえわかってりゃ、十分だ。あいつはオレを消そうと思えば消せる。捨てようと思えば捨てられる。でも、それをしない。その事実だけで、理由なんて十分だ。あんたは、違うのか?」
「あいつは……。一度、消えたんだ。私の前から。私を裏切ったんだ」
「だから? また置いてかれるのが怖いってっか?」
「……っ」
「置いてかれるのが嫌なら、追いかけてけばいいじゃねぇかよ。どこにでも付きまとってついていけばいい。消えるなら一緒に消えちまえよ。それとも、そんなこと出来ないって言うのか? その程度のモンか?」
「そんなことは! 私だって、あいつと一緒に居たいさ。 ずっと! 死ぬまで共に居たいさ! ずっと、戦場でも、どこでも、共にいたい。私だけが、一方的に置いて行かれるのは嫌だ。私だけが、あいつに守られてしまうのは嫌だっ」
「んじゃつまり、お前にとって、女だってことは、守られなきゃいけない存在ってわけなのか?」
「な、んでそうなるっ」
作品名:双子エピソード 作家名:日々夜