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双子エピソード

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共同生活


「というわけなんです。頼まれてくれませんか、レイ兄さん」
目の前で、銀髪に白マントのなじみの姿が、へらりと笑った。
「絶対に断わる」
オレもすかさず拒絶する。
「僕と兄さんの仲じゃないですか」
「確かに、オレはお前のことを弟分みたいに可愛がってきたつもりだ。が、それとこれはぜんっぜん別モンだろうが」
しかし、あくまで拒絶を示すオレの前で、笑顔を崩さずにその男、サーレスは食い下がってきた。
「いやぁ、僕のこと弟分だと思ってくれるなら、その息子の一人や二人面倒見てくれたっていいじゃないですか。確かに、やたら図体でかい息子ですけど。でも兄さん子育て経験豊富だし、きっと大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃねぇだろ、サーレス!」
イライラと、苛立ちと怒りが沸いてくる。傍らで幼いヴァイスがオレのことをきょとんとした目で見上げてくるから、それ以上は言わないが、ヴァイスがいなかったなら、今この場でサーレスをぶった切ってやりたいところだった。
「確かにね、あの人を兄さんが許せないのもわかるんです。でも、いつまでも憎しみを抱いていたって、前に進まないと思いませんか?」
「とか言いながら、自分が面倒見切れないからオレに押し付けようってだけじゃねぇのか!?」
「そんな、猫や犬じゃあるまいし。そもそも、あの人だって普通にいい大人なんですから、身の回りの世話くらいなら一人でやりますよ」
「そうじゃねぇよ! っていうか、なんでオレがあの野郎の身の回りの世話なんかやらなきゃねんえんだよ! それこそ赤ん坊じゃあるまいし!」
「別に、ヴァルディースさんと3人で下のお世話してくれてもいいんですけどね」
そんなことをほざいたサーレスに、落ち着こうと思ってユイスが淹れてくれた茶に口をつけようとして、盛大に噴き出した。
「汚いですよ、兄さん」
「てめぇがとんでもないこと言いだすからだろうが!」
ぜいはぁと、肩が大きく上下する。しかし、目の前の、年下の弟分は、しかし年下であるにもかかわらず、落ち付き払ってオレを見上げていた。
「ユイスさんからも何か言ってもらえません?」
「いや、まあ、確かにいつまでも憎悪とか嫌悪とかばっかり引きずってても、しょうがないとは思うんだけど、こればっかりは、ねぇ……」
「当たり前だ! オレはあの野郎の命令で母さんを殺す羽目になった。しかもこの手でだぞ。そんなヤツをどうやって許せってんだ……」
「でも、洞窟には行ってくれたじゃないですか。おかげで、彼だって、表にもう一度出てこようと思えるようになったんですよ? 引きずり出したのは兄さんなんですから、ちょっとは面倒見てくれたっていいでしょう」
それを言われてしまえば、言葉を返すことはできない。
光の届かない闇の中で、うずくまっていたあの男を、無理矢理引っ張り出してきたのは、確かに自分だった。
「んあ? ヴァイはどこ行った?」
ふと、後ろで傍観していたヴァルディースがそんな頓狂な声を上げる。
そういえば、つい今しがたまで傍らにいたはずなのに、その姿がどこにもない。
「きゃー、たっかーい!」
不意に聞こえてきたのは、外ではしゃぐヴァイスの声だ。
しかし、外には今あの男しかいない。
いやな予感が脳裏を駆け廻って、オレは外に飛び出した。
「ヴァイ!」
見れば、木陰でヴァイスが黒づくめの男に持ちあげられている。
「てめぇ、ヴァイに何してやがる!」
どなり声に、男はびくりと震え、振り返った。
「あ、これは、レイス、殿……」
おろおろと、男は持ちあげていたヴァイスを下におろす。地に足がつく前に、そのヴァイスの身体を、男から奪い取る。
しかし、その途端に耳元でヴァイスが盛大に泣き喚いた。
「やー! ヴァシッたんと遊ぶー!」
腕の中で暴れるヴァイスに抱えていることができず、ヴァイスが飛び降り、それからすぐに向かいの男の、ズタボロになった黒衣の影に隠れてしまった。
「ヴァイ、そんなヤツと遊ぶな」
「や! ヴァシッたんわるくないもん! まーのばか!」
幼いヴァイスが頬を膨らませれば、益々離れないと言うように、相手の足もとにしがみつく。
「申し訳ありません、レイス殿。ヴァイスくんにねだられて、断るわけにもいかず。お気に触りましたら、今後は近づきませんので」
相手も相手で、ヴァイスの行動に戸惑うらしく、やんわり、ヴァイスを引きはがせば、オレの前に押し出してくる。
だが、それでもヴァイスは離れようとはしなかった。
一体何が、こんな奴を気にいることになったのか。
「まさかなんか催眠術でも使ってたぶらかしたんじゃねぇだろうな」
「さすがにいくらガルグの長でも、お前ならともかく、ヴァイスくらいの精霊になると、一朝一夕じゃ術なんてかけられねぇぞ」
後ろから、頭をぐりぐりとヴァルディースに小突かれる。
確かに、精霊の質としてなら、自分よりはヴァイスの方がずっと上なのは事実であるから、何も返せない。
「レイ、もうやめてあげなよ。さすがにちょっとかわいそうっていうか、レイが心狭いみたいでなんか、やだな、僕」
追い打ちをかけるように、ユイスが肩を叩いてくる。
「ヴァシルも何か言ったらどうです?」
そうサーレスに呼びかけられた相手、ガルグの長だった男ヴァシル・ガルグは、気のない返事をして、オレを見下ろした。
そう、見下ろしたのだ。なんせ、こいつは、ヴァルディースに負けず劣らずの背丈がある。つまり、オレよりでかい。
「申し訳ありません、レイス殿」
「ああもう、事あるごとにあやまんな、このうざってぇ!!」
怒鳴りつければ、そのでかい男が身を縮めてしょんぼりとするのだから、益々苛立ちが募って行く。
ヴァシル・ガルグと言えば世界を恐怖に落とし入れた、闇の組織ガルグの長だというのは、世の子供ですら知っている。なのに、つい先頃の大戦が終わってみればコレ。
オレもガルグに所属させられていた実験体だった頃、こいつの命令で何人もの無実の人間を殺しまくってきたのに、その憎たらしい相手が、このざま。
「ああくっそ、オレにどうしろってんだよ!」
「まあ、普通に家族っぽいこと、この人に教えてくれると嬉しいなって。大丈夫ですよ、兄さん意外と面倒見いいんですから」
そう言うサーレスの後ろで、恐縮したように、頭を下げるその男の脳天を今すぐかちわってやりたい衝動に駆られながら、しかし。
「ヴァシッたんとかぞくなの? いっしょに住むの?」
と、目を輝かせるヴァイスには、勝てる気がしなかった。
「どうなってもしらねぇからな……!」
それから、オレとヴァルディースとヴァイスの家と、ユイスとフェイシスの家の間に、もうひとつ、小さな家ができたのは数日後の話だった。


作品名:双子エピソード 作家名:日々夜