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天空の騎士団___覇王の翼1

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第一章 総帥レオンハルト誕生!



 竜騎士___、そう呼ばれた者は剣を手に竜に乗る。戦いの場が、地上から天(そら)に移されたこの時代、人は天から大陸統一の野望を抱く。そのいい例が、西国ロレンシア帝国である。皇帝レイソルの元、精鋭竜騎士が中央の国ゲルマニア王国を陥落させる為に進軍したのは今から四~五十年前の事だった。ゲルマニアは、ロレンシアに比べれば小国であり、陥落もあっと言う間だろうと言われた。だがその期待は、国境を越えずして裏切られた。
 「___我がロレンシアが、敗れただと?」
 ロレンシア皇帝レイソルは、怒りよりも信じられぬとばかりに顔色を変えたと云う。ロレンシア竜騎士団八千に対し、ゲルマニア竜騎士団はその半分以下、そのゲルマニア竜騎士団に負けた事は、後の世まで語られる事になる。そして、今尚ゲルマニアの天は彼らを阻み続け、最強の竜騎士団と言えば何処かと問われれば、子供でもゲルマニア竜騎士団の名を上げる。
 今や、憧れの存在となりその志願者も少なくはない。
 「竜騎士になりたい___だって?」
 唐突な相手の言葉に、赤毛の青年が飲みかけた珈琲を噴き出しかけた。
 「やっぱり無理___ですよね…。ユージン様」
 「マジク、その前に竜に乗れるわけ?馬から何回か落ちたお前が」
 「…何回じゃありません。この前で百回です」
 「それ…、自慢にならない。というより、運動神経疑えよ…」
 ユージン・ガーディアンは溜息と共に、こめかみを押さえた。これが、我が従弟だというのだから、情けない。竜騎士団赤竜隊長でもあるユージンは、唖然としてマジクを見たのである。
 「竜騎士になりたいなら、あの人を説得できる人間を探すんだね。大陸広と言えど、いないと思うけど」
 「あの人?」
 「前総帥の息子にして、次期総帥有力候補。王都守備隊長レオンハルト様」
 今や、その名を知らない者はいない。竜の扱いに長け、更には剣に於ては竜騎士団の誰も叶わぬと云う。公爵と云う地位にありながら、今もその先陣に立つ男は、はっきりとものを言うので敵も多い。
 結局、マジクが雑用係として落ち着いたのはそれから数日後の事だ。
 だが、最強竜騎士団には今問題がある。竜騎士団総帥が、空位のままなのである。前総帥は、レオンハルトの父アーサー・イズ・デルフォニア公爵だが世襲ではない為、血縁だからと総帥になれるわけではない。
 それよりも問題は王宮側、即ち重臣の何人かが総帥任命を引き伸ばしている事だ。その先頭に、大公ロアルド・リッツェンベーガがいる事で事をややこしくしていた。
 「___どうなさいますか?」
 天空にて羽ばたく竜の騎上で、一人の竜騎士が口を開く。
 「何が?」
 「大公殿下を、このまま無視もできますまい。竜騎士団にまで、手を掛けているようですな」
 「相変わらず早耳だな、アーレス。今、顔を出してみろ。俺が、あいつを前に大人しくしていられる性格だと思うか?」
 「貴方は口は災いの元を、絵に描いたような性格ですな」
 「正直と言えないのか?」
 アーレス・ロウ・カーディフは、竜騎士団最高齢五十歳の竜騎士である。前総帥の片腕にして、黒竜隊長だった彼は今でもその任にある。
 そんな彼に対し、男は嫌そうに眉を寄せた。
 レオンハルト・フォン・デルフォニア___、金獅子の異名をもつ王都守護隊長。誰に対しても遠慮がない口調と性格は、確かに騒動の元だ。
 だが、その物言いは間違ってはいない。腹に一物ある人間にとって、ずばりと見抜かくレオンハルトは敬遠される。それが、大公ロアルドとなると、事は簡単にはすまない。
 二人は叔父と甥の関係にある。
 「俺の性格は、あいつに似たな」
 レオンハルトの言うとおり、似ているかも知れないとアーレスは思う。だが、胸に秘めているものはまったく違う。
 ロアルドはゲルマニアを意のままにしたい、レオンハルトは竜騎士としてゲルマニアを護りたい。明らかに違う。だが、三十年前の王位継承争いと、形は違え同じだ。父親のアーサー・イズ・デルフォニアが王位よりも国を護りたいと竜騎士として戦の先陣に自ら立った時のように、その息子も同じ道を辿った。しかし、現国王には世継ぎとなる太子がいない。大公ロアルドに批判的な嘗ての反対勢力は今は改革派として、王宮を彼らと二分している。
 レオンハルトの存在をどう思うか、言うに及ばすである。
 その大公ロアルド・リッツェンベーガはその頃、国王ヴィクトール・ヨハン一世に拝謁していた。