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天空の騎士団___覇王の翼1

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序章


 ___ゲルマニアの金獅子は天を飛ぶ。
 三国大陸中央ゲルマニア王国に、金の獅子がいると云う。最強の腕と言われ、その獅子いるところ、誰も彼の率いる竜騎士団を陥せず。天才___、それとも単なるまぐれか。
 ___天を制したものが、地を制す。世は、そうした時代であった。
 竜騎士による天空戦が、国の未来を左右する。大陸中央国家ゲルマニアと、隣国ディザイアと続く睨み合いは、五年目を迎えていた。
 「___聞いたよ、また海賊と派手にやったらしいね。王宮のお偉いさん達が、複雑そうな顔をしていたよ。ま、無理もないけど。よりによって襲われたのは密輸船だし、彼らの懐を温めてたわけだから」
 クスリと嗤う青年に、男は琥珀色の目を向けた。
 「随分詳しいな、マクシミリアン」
 「誰でも知ってる事だよ。ただ、証拠がない。ま、今回密輸品を押収しただけでも成果はあった。ねぇ、レオンハルト」
 当のレオンハルトは、眉を寄せ面白くないといわんばかりの表情だ。
 マクシミリアン・ユージニア___、レオンハルトと同年でユージニア伯爵の子息だ。
 ゲルマニア竜騎士団隊舎を訪ねて来たマクシミリアンは、暇を見てはレオンハルトを訪ね、たわいない話をしては帰っていく。彼曰く『傍観者』は、いつも事が終わった時に現れる。
 ゲルマニアの南に広がる南海は、最近海賊が出ると言うので、竜騎士団が見張っていた場所だ。そこに、いかにも怪しげな船が王国へ向かって航行していた。海賊かと彼らが出ようとした所に、本物の海賊である。当然、パニックになった。
哀れなのは、襲われた当の船である。積んでる荷は密輸品である以上襲われても文句は言えないが、まさか竜騎士団が現れるとまでは思っていなかった。
 王宮の重臣の何人かは、言葉は口にしなかったが真っ青になったと云う。密輸に関わっていましたと、暴露しているようなものだ。
 「お前___、連中に黙っていただろう。あの海域に、海賊が出ると」
 「『傍観者』だからねぇ、僕は」
 竜騎士団隊舎に出入りしてれば、竜騎士が何処に何をしに行くか理解る。南海には海賊が出る___そう噂を流せば、密輸させた王宮の貴族たちはそこを通らなかっただろう。
 「お前の笑顔にころっと騙される重臣が、哀れに思えてくる…」
 「酷いなぁ。君ほどじゃないよ。デルフォニア公爵が、天の上で暴れてる。一部の人間には別の意味で眉を顰めるよ。改革派は君を担ぐ気満々だよ、レオンハルト」
 「お前の父親も改革派だろうが」
 レオンハルト・フォン・デルフォニア。当年二十七歳、竜騎士団総帥直王都守備隊長にして、公爵家当主。別名『金の獅子王』。
 多少口は悪いが、その腕は誰もが認め、次期総帥候補でもある。
 その一方で、ゲルマニア王宮内は陰謀が渦巻き、レオンハルトの意志に関わらず彼を巻き込みつつあった。
 「俺に、じっとしてろなど王命でも無理だな。子供の時から竜に乗っているんだ。王宮で、嫌みを聞かされるよりずっといい」
 「彼らは君が気に入らないみたいだね。ま、誰構わずはっきり云うからね、君は。それが通じる相手かどうか構わずにね。特に___、大公殿下に嫌われたら、徹底的に陥されるよ。レオンハルト」
 「しつこさと執念深いのは、変わっていないな」
 掻き上げた癖のある金髪が、サラサラと背に流れる。
 大公ロアルド・グラヴィスは、国王ヴィクトール・ヨハン一世の弟にあたる人物である。
 三十年前起きた王位継承問題に於いて、彼は重臣たちを見方にし、現国王を即位へと導いた。問題は、それが王宮を牛耳る為のものだったと云う事だ。
 現に、王宮は大公と名乗るロアルドと彼を維持する重臣の天下である。温厚な国王は、彼らを抑える力はなく、ロアルド派の重臣及び貴族たちは国の事よりも己の利益と保身を図るのに必死だ。
 だが、大公ロアルドは、まだ安心できなかった。
 レオンハルトは、三十年前に王位を争った相手の息子だったからだ。現国王のもう一人の弟であり、人望と共に人気があったアーサー・イズ・デルフォニア。国王間違いなしと云われた彼が自らその権利を放棄し、竜騎士団総帥として下ってその争いは落着したが、当時ロアルド派の対抗勢力は今は改革派と名乗って健在である。嘗ての旗頭アーサー・イズ・デルフォニア公の息子を担ごうとするのは明らかである。
 気に入らないのは、当然である。
 「俺にその気はない」
 「その気がなくても、君は目立つ。活躍すれば活躍するほどね。それと竜騎士団総帥の件、まだ空席のままだけどその任命の件に彼、関わってるよ」
 「いくらやつでも、うちに介入できない筈だぞ」
 竜騎士団新総帥任命権は、創立以来竜騎士団に託されている。
 前総帥が竜騎士の中から厳選して指名、もしくは総帥参謀と呼ばれる幹部騎士によって選出されるかだが、全て前総帥の指名で決定している。ただ今回は、その指名をする間もなく前総帥が死去し、初めて総帥参謀による選出が行われる予定であった。
 「あの方なら、どうにでもできるよ。竜騎士団をも牛耳る事も、ね。これじゃぁ、ますます君には総帥になって貰わないとねぇ。このゲルマニアの為にもね」
 レオンハルトと、ロアルド・リッツェンベーガ。因縁の対立は、ゲルマニアにどんな嵐を呼ぶのか未だ誰にも理解らない。