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正しいフォークボールの投げ方

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 試合に出られなくとも、皆と近くに居て試合を見届けたかった。それは今の自分が出来る唯一のことだった。

 ふとオオタはヒロに視線を向けた。
 声をかけようとしたが、今は試合中ということもあり見合わせて、オオシマの方へ視線を移したのであった。

 大府内高校の押せ押せの勢いだったが、鬼の形相となったムラタの気迫が籠った投球に、応援虚しく三者凡退に討ち取られてしまった。

 しかし、二対四。オオタのスリーランホームランで大府内高校は遂に逆転したのである。

 ベンチに戻ったムラタは、自分のグローブを地面に叩きつけて、憤怒を露骨に示した。

 一年生に打たれて、あまつさえ怪我人に本塁打を打たれてしまった。しかも、今度は二点差を追う形となったことに織恩高校のエースとしてのプライドを大いに傷つけられてしまったからだ。

「兆冶さん、落ち着いてください。次の回のピッチングに響きますよ」

 恐れもなく怒り狂うムラタに声をかけたのは、打席に立つ準備をしていたオチアイだった。

「解ってるが……」

「俺が打ちますから、ドッシリと構えてくださいよ」

「だけど、オチ。あのモトスギってヤツを打ち崩せるのか? あのフォークボールは想像以上だぞ」

「あれだけ、みんなが空振ってしまうのは、ただのボールじゃないんでしょうけど……。あれはカーブボールですよ」

「カーブボール?」

 フォークボールの変化とカーブボールの変化は全く違う。頓珍漢な発言にムラタは首を傾げ、若干怒りを薄れさせたのであった。