正しいフォークボールの投げ方
観戦の途中で、沙希が持ってきてくれた手作り弁当……大量のおにぎりを食べることになった。
おにぎりは、口にしたら米粒は自然とほぐれて、程よい塩が効いている。中の具もサケや昆布、明太子と豊富で飽きをこさせず、何個でも食べたい、食べられると思わせるものだった。寮のおにぎりやコンビニが売れているようなおにぎりの出来とは雲泥の差であった。いや、比べるのも失礼にあたる。
具材の味付けも完璧で、手や口が止まらない。一時、試合観戦を忘れるほどに夢中になり、何度も「うまい!」と連呼してしまい、その度に沙希は照れ笑いをしていた。
そんなヒロにイナオはおにぎりを頬張りながら、
「ちゃんと試合を見ろよ」
優しく注意を促したが、イナオもまたヒロの思いと同じだった。
「美味い、美味すぎる!」
作品名:正しいフォークボールの投げ方 作家名:和本明子