moonlight 改稿版(後編)
「……」
これで懲(こ)りただろうと思い、ネオは無言で教室を出て行った。
手が、震える。
親友だから、親友だからこそ殴った……。
そう言い聞かせ、ネオは一人、家に返った。
しかし、翌日。昨日の一発も空(むな)しく、今度は自分の下に牙が向けられた。
机に「死ね!」とか、「消えろ!」とか、書かれていたのだ。それを書いたのはもちろんあいつだ。親友という関係を一瞬で崩した卑怯者(ひきょうもの)。ネオは消しゴムで消すが、そのラクガキは毎日続いた。
しかし、ネオは我慢し続けた。
彼女の良心が再び芽生(めば)えることを信じて、我慢(がまん)し続けた。『親友』だから。それに、先生に話したりすれば、さらに事が大きくなると思ったから。
あいつのために、わたしが……。
自ら背負った苦々しい日々を過ごし、時は夏。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ