moonlight 改稿版(後編)
一方、
「緊張しますね……」
と巧。緊張のあまり、手が震えている。
彼は昨日言われたように、いつもの暗い雰囲気から脱却(だっきゃく)――いや、「自分を変えたいんなら、まずは服装からよ!」とネオに指摘され、彼女とみちるの自腹(バイトで貯めたお金)で買った、ビジュアル系バンドが穿いてそうな、彼の細い脚を美しく目立たせるスキニーチノ。腰のベルトはギラギラと銀色に輝いている。そして、他のメンバーのような緑色の体育館シューズではなく、黒のブーツを履(は)いている。本来はいけないが、今日は緑のシートが講堂中に敷かれているので問題ない。そして最大にして最強の武器、顔が整ったこのイケメン顔。いかにも某男性アイドル事務所でデビューできそうなテイストだ。
その服装に似合わない、ガチガチの強張った顔をしている巧に、みちるは肘(ひじ)で脇腹をつつき、
「とか言って、ロックフェスのときは、相棒のベースを楽しそうに引いていたクセに」
「そうそう、今日もアレくらいやっちゃてよ!」
ネオにも背中を軽く叩かれる。
「は、はあ……」
どうしたらいいんだろう、と巧は思う。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ