moonlight 改稿版(後編)
実緒はその場に座り込んで憔悴(しょうすい)した。
自分がコーディネートしたピンクの部屋も黒く染まっているように見える。
置いてある絵を見つめるたびに、破れたり、ラクガキされた絵ばかりが脳裏に浮かぶ。自分を否定されて、ズタズタされた自分。そう思うだけで、周りも敵だらけに見える。
そのことを、自分のことを親友と呼んだ人にも言ったのだ。私を助けるひとは、もういない。
実緒の心は、絶望感でいっぱいだった。この心はもう……今日見たあの夢のように誰か……。
すると、
「シー、ディー?」
昨日何もなかったはずのローテーブルの上に、CDケースが置いてあった。
『いい曲だから聴いてみて』
「……?」
母親が書いたメモが貼っており、実緒はとりあえず書かれた通り、ケースを開けてCDを取り出し、再生した。
「!」
その歌声に、実緒の目が大きく見開いた。
この声は、ネオちゃん?
ゆっくりと始まる旋律(せんりつ)から、彼女が力強く歌い上げる。その声は優しさで溢(あふ)れ、実緒の心に強く響く。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ