moonlight 改稿版(後編)
思いたくない。思いたくないけど。
これってやっぱり……。
頭の中で、ある三文字の言葉が思い浮かぶ。そして、その事件があったのは恐らく――。
歯にぎゅっと力が入る。ネオはすぐに顔を上げ、
「先生! 竹下さんって、確か美術部でしたよね!?」
「え? ええ、そうだけど……」
「ありがとうございます!」
「麻倉さん!?」
ネオは全速力で教室を出ていき、すぐ側にある階段を駆(か)け上がっていった。
廊下で「ネオ!」と呼ぶ、みちるの声も空耳に聞こえるほど、必死に。
――そして今、ネオは学生校舎から右にある専門教室校舎へと向かっている。
美術部に問い詰めるために。
実緒が『傷つけられていた』という真相を確かめるために。彼女とのやり取りで思い当たる節がそれしかないのだ。
ネオは思う。
あの表情はもしかしたら、「助けて!」というサインだったんだ、と。それが本当なら、なぜあのときから気づけなかったのだろう。むしろ、その違和感を夏休みに打ち明けたら良かったんじゃあ……。思えば思うほど、早く行動しない自分がバカに思えた。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ