moonlight 改稿版(後編)
――実緒の手をとって、暗い闇に染まった景色から引っ張り出したい。
しかし、インターホン押しても何も反応がない。
だがそれでも、ネオは何度も何度も鳴らした。
そして、
ガチャ!
「実緒!」
「ネオ、ちゃん……」
緑の縦縞(たてじま)模様のパジャマを着た実緒が、恐る恐る顔を出した。精神的に疲れたのか衰弱しており、『恐怖』という塊が、全身を蝕(むしば)んでいるみたいだ。
でも、それでも実緒はいたのだ。
「よかった……最近、学校に来ないから心配したのよ」
彼女がいることが確認でき、ネオはハァーッ、と安堵(あんど)の息が漏れる。
「何かあったの?」
向井のことは分かっていない素振りで、そして彼女が怯えないようにネオは優しい口調で訊ねる。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ