moonlight 改稿版(後編)
「ネオちゃん、私……私……」
実緒は涙ぐみ、
「もう、描けない……描けないよ……」
胸に詰まったような悲痛な声が、ネオに突き刺さる。
「怖いの。怖くなったの。せっかく一生懸命が頑張っているのに、頑張っているのに……絵が、絵が、教室に入るたびに破られていて……。それを見るたびに頭が真っ白になって、拒絶されているみたいで。そう思ったら、クラスや部員のみんなと会うのも怖くて……」
「実緒……」
やはり、不登校の原因はあのゴミクズ野郎――向井だった。
実緒の双眸(そうぼう)から大粒の涙が零れていく。彼に植え付けられた恐怖が――あいつがいかに非道なことをしてきたか、この痛みをネオは分からせてやりたい気持ちでいっぱいになった。
「だ、大丈夫だって。わたしはあいつとは違うし、それにmoment’sのメンバーだって、実緒の絵を絶賛しているよ。そんな実緒の絵に――実緒が漫画家になりたいという夢に向かって一生懸命だから、わたしも歌手になる夢にもっと一生懸命になれるんだよ。負けられないって。だから……」
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ