moonlight 改稿版(後編)
とめどなく流れる涙が次々と宙に浮かぶ。
「ネ、ネオ!?」
「……っ!」
大嶋先生から事情を聞いて追いかけていたみちるの存在にも気づかず、ネオは神速(しんそく)のごとく階段を駆け下り、下駄箱で革靴に速攻で履き替え、校舎まで続く長い坂を下って駐輪場へ向かった。そして自転車の鍵を外し、駅の方角へと向かう学生が「うわぁ……」とあっけにとられるほどの速さで実緒の家へと向かった。
晴天だった空模様はネオの気持ちを反映しているのかのように、徐々に怪しくなった。
ハァ……ハァ……。
団地の長い坂を登りきり、ネオは実緒の家の前にいた。
こんなに全力を出したのはいつだろうか? 制服が汗で冷たく染みている。
ネオは家の前に自転車を置き、すぐさま玄関前にあるインターホンを鳴らした。すべては自分の想いを、向井という「あんなゴミクズとは違う!」ということを伝えるために。いつでも実緒の味方だと伝えるために。いつも親友のことを想っていることを。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ