moonlight 改稿版(後編)
だから、踏みとどまった。心の内にある怒りを、引き出しの奥へ奥へと無理矢理押し隠した。
そして、拳(こぶし)を下げた。
この場にいるのはネオと向井しかいないと思わせるような沈黙が続く。
ネオはそれを利用して、踵を返して下の方へと歩き出した。
「な、なんなんだよ……」
予想外の行動に、向井は唖然(あぜん)とする。
「……」
ネオは涙をこぼしながら静かに廊下へ出ていき、
「あんたのせいで……、」
溢れる涙でくしゃくしゃになった表情で向井を見つめ、
「あんたのその腐った神経が、実緒の心をむちゃくちゃにしたんだよ!!」
抑え込んだ怒りを言葉に変え、ネオは猛スピードで廊下を走った。
実緒、実緒!
なんで気づいてやれなかったんだろう。なんで力になれなかったんだろう。後悔の念が次々と、頭の中で渦を巻く。わたしはまた、あの時と同じことをやってしまうの!?
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ