moonlight 改稿版(後編)
涙で潤(うる)んだ瞳で、キッと鋭い目つきで向井を見つめ、
「こうしてやる!!」
ネオは勢いよく向井の顔面を目がけて、力強く握(にぎ)った右の拳(こぶし)を突きだした。
美術室に「うわぁ!!」と、恐怖と驚きが入り混じった悲鳴が響き渡る。
しかし。
「……っ」
向井の顔面ギリギリのところで、ピタッと踏みとどまった。
ネオは分かっていた。同級生に向かって『殴る』という行為が、どれほど重たいものかを。小学生の頃とは違う。この一発と引き換えに、moment’s(モーメンツ)メンバーを裏切ることがどうなるかということを。
ここで彼と暴力沙汰(ぼうりょくざた)を起こしたら、内に溜(た)めに溜め込んだ怒りから解放されるだろう。だが、それと引き換えに、総合祭に向けて必死にここまで頑張ってきたものが、崩壊してしまう。仲間たちを裏切るわけにはいかない。そして、自分たちのステージを楽しみに待っている学生たちにも……。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ