moonlight 改稿版(後編)
そんな彼女の異変に気づけなかった自分が、今でも腹が立つ。ネオは未(いま)だにこの出来事を自分への戒(いまし)めとしている。
確かに彼女は悪いことを犯(おか)した。だけど、彼女の気持ちを汲(く)み取ることはどこかでできたはずだ。それが分かるのは、ずっと一緒にいる自分だけ。もしそれができていたら、変わったかもしれない。親に相談することだってできたはずだ。それができず、親友を失ったのが悔しくてたまらなかった。
――それを再び起こしてはいけない!
ネオは静寂と化した教室の中で、学生たちがガヤガヤとしている――美術部が活動している美術室へと辿りついた。
ネオはためらいもなく、
バン!!
勢いよく教室のドアを開いた。
その力強い音が、美術室にいた部員全員を黙らせた。キャンバスに向かって色を塗る作業も中断する。「あんた誰?」と言っているような視線が、ネオを完全アウェイな状況にさせた。
上等じゃない! ネオは孤立(こりつ)状態に動じず、険悪な顔つきで堂々と中へと入っていく。
作品名:moonlight 改稿版(後編) 作家名:永山あゆむ