これが日常
瑠衣と涼
浮かない表情を浮かべ、首を傾げながら廊下を歩いていたルイは、視線の先に耳が生えたような身長の低いシルエットを見つけて、思わず駆け足でその背中を追った。もちろん簡単に追いついて、ルイはその小さな肩に手を置いて声を掛ける。
「ねぇねぇリョウ」
「ん?どうしたの、ルイ」
振り向いたリョウの前髪は癖のある栗色で、目が見えないほど隠れてしまっている。耳のように見えたのは、彼が被っているフードのデザインのせいだった。ロップのように垂れた耳を連想させる。
「ちょっと悩んでたんだけどさ…防衛のためなら射殺も致し方ないと思っている人間と、防衛のために銃を所持していても使わない人間ってどっちがまともかな?」
その問いに、リョウはルイと同じく小さく首を傾げた後、口角を上げて答えた。
「どっちもどっちでしょ」
「あー…まぁ、そんなもんだけどねー」
「でしょ?射殺した時点でもうそいつは立派な人殺しなわけだし、銃を持ってても使わないとかただの宝の持ち腐れだし何より馬鹿。うましかちゃん以外の何物でもない」
「言えた義理じゃないくせにー」
「なんなら丸々お返しいたしますよ〜」
「結構ですぅ〜」
くすくすくすと笑いながら2人は歩き出した。
「人殺しは悪いことじゃねーだろ。法的に正当防衛として守られてるくらいなんだから」
「うん。別に、人殺しをしたくらいで何言ってんだろうねー…本当、人ってわかんないよ。平気でゴキブリとか殺してるくせに、同族が殺された時に限って口が達者になる。気持ち悪い、あーほんと気持ち悪い人間キモイ」
「俺たちも一応、人間だけどな」
「人を殺した時点で人じゃないんだってさー、誰かが言ってた」
「じゃあさ、みんなで一緒に鬼になろう。そんで、人間狩っちゃう?」
「童遊びはリョウの得意分野だからやめとく。ほんとにみんなくたばっちゃうよー」
エキセントリックな会話をする10歳と14歳の少年少女は、リビングに戻ってからも同じような話題で数時間語り明かした。