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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 6 娼婦と騎士

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「アンジェが怖かっただけでしょ。・・・さて、シエル。こっちの調査資料はいいとして、なんで計画書にアリスの名前が入ってるのかにゃ?」
「う・・・。」
「まあいいにゃ。ウェルサを調べあげた手腕は見事なもんだね。あいつはどうも最近自分が王になるべきだとか、エドを娶るとか色々と勘違いしちゃってるきらいがあったから、そろそろ失脚させるなりなんなりしなきゃいけないと思ってたけど。まさか、この間の宰相殺しに噛んでたとはね。」
「というか、姐さんは一体どこでこの調査の事を嗅ぎつけたんですか。それに、フィオリッロ殿の都合ってなんですか。」
「察しがついてるのにとぼけるにゃ。あんたのお友達と同様、殺されたケット・シーはあたし達の友達だったってわけよ。特にアンジェの肝いりでね。足抜けできたらお屋敷で召し抱えられる予定だった。こっちの事情はそんなところよ。調査の事は、死んだ騎士があんたと親しかったってわかったからきっと調べてるだろうと思っただけ。まあ、もし調べてなかったら調べさせるつもりできたんだけど、シエルは本当に気が利くいい子だにゃあ。」
「ひでえ・・・俺は別に姐さんの奴隷でもなんでもないのに。」
「まあ、ほら。頭撫でてあげるから機嫌直しなさいって。」
「こ、子供じゃないんだからそんなことされたってで機嫌なんて直りませんよ!」
 口ではそう言っているが、メイに頭をなでられているシエルの表情はどことなく嬉しそうである。
「なあ、シエル殿。」
「なんでしょう。」
「・・・貴方はもしかして、メイの事が好きなのか?」
「にゃははははは、何言ってるのアンジェ、そんなわけないじゃにゃいの。こいつはキャシーのことが気になって気になってしかたないんだから。」
「そ、そうですよ全く何言ってるんですか!誰がこんな40近くにもなってにゃーにゃー言ってるちょっと痛い年増を好きになるっていうんですかやだなあもうそれだったらまだエドのほうがストライクゾーンですよ。」
 一息に言ってから、シエルは自分がうっかり口走った内容について後悔したが時すでに遅し。シエルの頭を撫でていたメイの手はそのままシエルの頭をしっかりと掴んでいる。
「・・・シエル。」
「ひゃい・・・。」
「歳のこと言うなって言ってるよねえ。」
「すみませんでした。あと、本当に申し訳ないんですが、爪を立てるのをやめていただけないでしょうか。」
「・・・次言ったら血が出るくらいじゃ済まないからね。」
「はい。気をつけます。」
(ふむ・・・?気があるように見えるんだがなあ・・・。)
「それで?なんでアリスが計画に入ってるの?あいつ確か今は牢屋の中でしょう。」
「いやあ、なんというか。彼女に事件の見解を聞こうかと思って牢に行ったら、成り行きでウェルサの討伐を手伝ってもらうことになっちゃいまして。」
「ちょっと待ちな。行ったの?牢に?」
「ええ。牢番と知り合いだったんで、ちょっとお金を渡して、適当な理由をつけて。」
「あきれた・・・なんで容疑者に事件の見解を聞くのよ。」
「他に適当な人がいなかったんだから仕方ないじゃないっすか。姐さんはフィオリッロ殿の屋敷に入り浸りだし、キャシーはユリウスの世話で忙しいし、ヘクトールさんはジュロメだし。」
「それで、牢まで行くというのもすごい話だな。」
「ま、状況が揃いすぎてて逆に犯人じゃなさそうだったんで、結構気楽に行けました。で、彼女にグランボルカ軍に変身能力を持った人間がいないかを確認して帰ってきたんですけど、その時にカズン殿の仇を取りたいっていわれちゃいまして。それでまあ、一応計画に入れてるんです。」
「・・・ていうか、何故かあたしの名前が入ってるんですけど。」
「だって、姐さんはどうせ手伝ってくれるでしょ。」
「手伝うけど事前に一言くらい言いにゃさいよ!」
「だから、声をかけようにも姐さん最近フィオリッロ様のお屋敷に入り浸りだったじゃないですか。」
「居場所わかってるんだからあんたが来なさいよ!」
「不条理だ!」
「まあまあ、二人共。ところでシエル殿。この計画に空きはあるかな?」
「正直言って、人手不足ですからね。こっちは姐さん入れても3人。あっちは5人ですから。」
「なら、私が入れば4人だな。」
「・・・いいんですか?バレたらお家断絶もありえますよ。」
「バレないさ。」
(この自信はどこからくるんだろうか・・・。)
「じゃあ、僕も入れて丁度5人ですかね。」
 声とともに天井の一部が開いて、ルーが降りてきた。
「アリスさんが参加するのに、一番長い付き合いの僕がカズンの弔い合戦に参加しないわけにはいきませんからね。それに僕の薬なら牢番を一晩眠らせることも可能です。牢番が寝ている間に仕事をして牢に戻ればいいんですから、アリスさんの連れ出しも簡単ですよ。」
 ルーは一見普段通りのにこやかな表情で話しているように見えるが、言葉や態度の端々から隠しきれない怒りがかいま見える。
「姐さん。俺、今日ひとつだけわかったことがある。」
「何?」
「・・・俺、機密保持とかスパイとか向いてないわ。」
 シエルはそうつぶやいて大きなため息をつくと、資料を広げて全員に作戦の概要を説明し始めた。