探索
探索2
1
緩やかに回転するふるさとに登ると、木々のさえずりの重さを髪が貫く回数に敏感になる。僕はふるさとの証拠だ。ふるさとは論理的に父と母を演繹する。ふるさとの境界面には無数の弾痕があり、ふるさとを動かす回路の結節点となっている。ふるさとの田畑は星座を作り、星座が落とす光針がふるさとの底面で僕の系譜を刺し描く。きれぎれになった学校は教室を殺す、四角い雨音は窓を満たしてゆく。
2
手から生えてくる指を収穫する季節に、足音は気体と激しくこすれる。指の季節、血管をところどころ絡ませながら、僕は服をたくさん着込む。服に縫い込まれた距離や倫理が皮膚へと垂直に摂り込まれ、手においてそれらの渇いた矩形が指を建築する。山はひきつったように赤く、空は墜されたかのように秘めやかだ。指の描いた軌跡に指の記憶が詰められていく、この指は出荷され、評論を書く指となる。
3
複製された果樹園の中を歩くと、果樹園の行政がいたるところに収監されている。液体の行政が固体の行政で濁っている、気体の行政は地面に根を張って膨れている。あらゆる葉の中で官僚は雲の性別を分類している、あらゆる幹の中で長官は水の戸籍をまとめ上げている。僕は果樹園の立法者。僕を構成するあらゆる繊維は法条であり、僕は肉から繊維を抜き取って樹々の枝に縛り付ける。法条は液体の行政に溶けて果樹園を循環する。
4
三角形の多い土地で、美術館は瞋っている。絵画は音符を並べている、来館者は休止符である。建築のもっとも美しい角度ともっとも醜い延長が、休止符の中に堆積してゆく。音符は他の音符を切り刻み、音符の破片は菌糸として美術館を伝導する。せりあがった彫刻たちは音符の表面に囲まれ、音符の先端は彫刻を貫通し彫刻の影に紛れ込む。僕は音符と休止符を演奏する、なぜならば僕は三角形だからだ。