エイユウの話~終章~
「・・・調べてくれたのか」
何を調べたのか、察することはできた。心の導師が優秀とはいえ、わざわざ他専攻の術師に頭を下げたのだ。彼らの方が普通に調べられる相手、それはキースである。前緑の最高術師であるノーマンが、その後釜となった金髪の術師が気になっている。違和感はあるが、導師が他専攻の最高術師を調べるよりはましだろう。
空を流れる雲は意外と速く、太陽の前を通り過ぎる。それと同じ速度で、ノーマンが導師に向かって歩を進めた。彼が導師の前で歩を止めると、雲は彼を置いて流れて行く。太陽がまた姿を現した。
ノーマンは持っていたA4サイズの封筒を、勢いよく導師の前に突き出した。とても導師に対する態度ではない。
「貴様のためじゃない。可愛い後輩のためだ」
貴様、という言い方も穏便ではない。ラジィとアウリーは再び顔を合わせた。彼は怒っている。日の光で輝く彼の髪が、何とも神々しくて、畏怖すら感じる。彼の無愛想ぶりもそれを上乗せしていた。
ノーマンはちらりとラジィとアウリーを見ると、そのまま向きを直してギールのもとへ移動する。それから二人の方に向き直り、口を開いた。
「関係者だから、彼女たちにも説明しようか」
そう言われると、導師は心配そうに二人を見た。しかし、二人は導師を見ていない。関心は、彼の調査内容に行ってしまっているようだ。今から退かせることは無理だろうと、父親として娘の性格を把握していた。
「わかった」としぶしぶ了承したが、代わりにアウリーが口をはさむ。
「あの、でもキース君じゃないって・・・」
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷