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エイユウの話~終章~

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 速足で人込みを駆け抜けて歩く心の導師に、女子二人は走って追いかける。キースを助けるためだと言え、キサカを売ったわけではない。キサカを捕まえられては困るのだ。
 ラジィが呼び止める前に、導師が足を止めた。ぶつかりそうになり、二人は揃って急ブレーキをする。疑問に思い、彼の視線を追っていくと、そこには。
「ノーマン先輩・・・」
 偉そうに壁に寄り掛かる姿、堂々とした態度、晴れ渡った空の色の瞳、そして何より、金色の長髪。間違いなく前緑の最高術師、ノーマン・ネージストだった。彼は秋祭りも終わり、就職先も決まっているのであろう。もう学園に来る必要はないはずだし、少なくとも他専攻の導師に用はないはずだ。だから、この事態は不自然だった。詳しく言えば彼を見て、心の導師が足を止めることがおかしいのである。
 奥を見ればギールもいて、違和感を増させる。ノーマンはきっと一人でも、行動するときはするだろう。ギールを呼ぶとは思わない。ギールだって、ノーマンを監視する任務は秋祭りをもって終了したはずだ。
 それらの前提二つから推測されるところは一つ。
 心の導師が、秋祭りのうちに彼らに何らかの頼みごとをしたということだ。
 秋祭りの期間なら、逃げ回ってはいたものの、片方だけに何らかの頼みごとをするのは難しかっただろう。それに導師に頼まれた仕事であるなら、共に動いた方がいいのかもしれない。
 同じ推測をしたようで、ラジィがアウリーを見ると、彼女もラジィの方を見ていた。しかし声に出して確認し合うわけにもいかない。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷