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エイユウの話~終章~

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「まったく、毎度毎度、よくそう昔話ができるね」
 状況と時代のせいだろう。キースは昔のおっとりした性格ではなくなり、すこし、斜に構えたような物の考え方をするようになっていた。いなくなったキサカの真似をしているようにも見えて、事情を知っているものとしては少々切なさが残る。
「それに付き合ってくれる人がいるからですよ」
「エイユウは、暇なものでね」
 キースはこの時代、緑の英雄と呼ばれていた。学園反乱を止めた権威で、少し前までは英雄としてこの魔術学校に住んでいた。しかし自分は珍獣ではないと申し入れ、今の導師の地位がある。とはいえ、扱いにそう変わりは無く、高齢で仕事の少ないジャックとよく話をしていた。
 ひゅうと風が吹き、木々が揺れる。梢が聞こえてきて、気分を爽快にさせた。それをあえてぶち壊すように、彼が嗤った。
「全く、馬鹿げているね」
「何がです?」
「僕のことさ。学園を守った緑の英雄なんかじゃない」
 そういうと、皮肉交じりに笑顔すら消え、真面目な顔でつぶやいた。
「ただの、友人を守れなかった、身勝手な男だよ」
「それは・・・」
「言い過ぎだってことは解ってる。君ならそう怒るだろうと、十年毎日顔を合わせていれば誰でも解るさ。確かに結果的には学園を守ったかもしれない。でも、学園を守ろうとしたわけじゃない。守ろうとしたのは、友達だったはずなんだよ」
 虚ろな目で、若木を見た。昔植えられていたのと同じ種類の樹木らしい。もともと草木に強い方ではないから、何回か聞いたはずだがキースはその名前を覚えていない。皆で語らったあの広葉樹は、学園反乱の際に死んでしまい、処分されたのだと知らされた。
 学園自体も様相が変わっている。彼の通ってきた廊下も、元々は壁など付いていなかった場所だ。そしてこんな、老人がくつろげる縁側なんかもなかった。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷