エイユウの話~終章~
さらにそれからしばらくしてジャックは、同じく心の導師となったアウリーと籍を入れた。彼は八十になった今でも、当時のことをよく覚えていた。
「私は、まだキース君のことが忘れられません。それでもいいですか?」
彼女なりのけじめだったのだろう。三年付き合ってプロポーズした時に、そう聞き返された。けれども、ジャックが迷うことは無かった。
「僕が好きなのは、彼のことを一途に思う貴女だから」
そういうと、彼女はとても幸せそうに笑っていた。
結局彼女は体が丈夫な方ではなかったようで、六十代の時に亡くなった。病気ではなかったし、五十歳というアルディの平均寿命から考えても老衰だったのだろう。
「そんな彼女と入れ違いに、君が帰って来たんだったね」
そう言われると、キースは獣の耳をピクリと動かした。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷