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エイユウの話~終章~

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「まさか、それから六十年後に姿見の中から出てくるとは思っていませんでしたよ」
 そう、ジャックは笑った。
 あの事件の後、ジャックは心の導師の計らいにより、地の導師となった。元の地の導師は生きていたのだが、学園反乱を事前に防げなかったことや、対処が不十分だったことなどを理由に、当時の全導師がその権利を剥奪されたのだ。
 ラザンクール・セレナについては、長い間、昏睡状態が続いていた。それでも一度だけ、学園反乱から五日後のその一日だけ、意識があった日があった。
 ひびの入った白い天井を虚ろな目で見上げながら、彼女は涙を流した。
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
 一体何に謝っていたのか解らない。が、後日学園反乱中の物と思われる彼女の手記が見つかると、その言葉の意味が解った。
 彼女もまた、キートワース・ケルティアに好意を寄せていたのである。ただ彼女はとても不器用な人だった。周りからの目を恐れ、彼を好きだという気持ちを見つめることが出来なかった。彼女がアウリーを応援していたのは、彼に彼女ができれば諦めもつくだろうと思っていたからだ。また、流の導師やキサカに好意を寄せたもの、キースが自分のことを諦めてくれることを願った他に、「もっといいのがいるじゃないか」と自分に思い込ませるための物だったのだ。
 また、キースに純粋に好意を寄せるアウリーに憧れていくたびに、彼女の好きな人に好意を持っていると気付いてしまった自分への自責の念や、劣等感が生まれていたと受け取れる記述も見られた。
 この事実を知った時、アウレリア・ラウジストンは大層なショックを受けていた。
「私がいなければ、二人は幸せになれたのでしょうか?」
 もちろんこの問いかけにジャックは答えることができなかった。
 ラザンクール・セレナがその短い生涯を終えると同時に、保険医は学校を去った。後日に解ったことになるが、彼女はそのまま失踪してしまったらしい。流の導師との間の子供を無事出産したと言う話までは聞いたが、それ以降の情報は全くなかった。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷