エイユウの話~終章~
それから数分後、二人は中庭の前に着いた。普通ならすぐに行けるところも、回り道だったり瓦礫を乗り越えなければならない状態になっており、異様に時間がかかってしまった。ジャックがひき返す前に通れた道もいくつもがダメになっており、二人の戦闘の激しさを知った。
協力すると心に決めたが、実際彼女を守れるだろうかと不安になったジャックに、アウリーの声が届いた。
「キース君!」
慌てて瓦礫を上り、彼女の視線を追うと、金色の少年が、姿見を魔力で反応させ輝かせていた。あの大きさの木鏡を使うなど並の術師ではできないことで、彼との実力差を思い知らされる。
彼の勝利を思われる状況で、ジャックは心なしか安心したが、ある違和感を覚えていた。
彼の腕が、姿見に入っているように見えたのだ。
「キース君、ダメです!」
アウリーにもそう見えたようで、彼女は二人に向かって走り出した。危ないとジャックが慌てて追って捕まえたその時だった。
凍氷が太陽にように激しく、攻撃的な光を放ったのだ。木鏡がそんな光を発するなどどの文献でも読んだことは無く、二人はとっさに目を瞑った。輝きはしばらく続き、ようやく目が開けられるくらいにまでなったころには、その一帯には姿見しかなかった。
「きー、す・・・君・・・?」
「魔禍の・・・は、ど・・・こに・・・」
あの時、茫然とした二人の前から、二人の少年が、同時に姿を消したのだった。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷