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エイユウの話~終章~

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 学園反乱の最中。ジャックは最前線で戦っていた。強い術師がどんどん魔力切れで倒れ、一応上位十位以内にいたということから、そこに連れ出されたのである。しかもその場所に何が起きたのか、イクサゼルに憑依されたというキサカ・ヌアンサが飛んできたのだから、また厄介なことだった。
 けれども地の魔術と言うのはなかなか面倒な物で、土陣がないと何も出来ない。魔力より先に土陣が無くなった彼は、それを取りに一度そこを撤退した。
 走って教室に戻り、手当たり次第に紙を持っていこうとしていた時だった。目の前を、真っ黒な生物が疾走して行くのを見た。と、同時に、この地獄のような学園で、太陽のように輝く金色がふと目を引く。
 緑の最高術師の彼だ。
 そう、すぐに解った。彼があの最前線に向かう。彼の才能は凄いものだから、とても助かることだろう。でも・・・
 本当に、彼は勝てるのだろうか?
 そう、一気に不安になった。彼でも敵わない相手に、自分は向かっていけるのだろうか?学園で一位二位を争う彼ですら勝てないのだから、学園内で考えれば三十位以内に入るかも解らない程度の実力の自分に勝てるわけがない。無謀な話だ。
「すいませんっ!」
 はっとして顔を上げると、鮮やかな橙色の髪の少女が必死で走ってくるのが見えた。彼の思い人の、アウレリア・ラウジストンである。彼女は彼の前で脚を止めると、泣きそうな顔で見上げてきた。
「き、キース君を、見ませんでしたか・・・っ!」
 少しだけ、ショックを受けた。こんな状況になってまで、彼女は彼を思い続けている。それが、凄く悔しい。けれども、彼女の切羽詰まった顔を見て、見なかったとしらばっくれることは出来なかった。
「向こうに行きました」
 ジャックは来た道を指した。瓦礫が無数に転がっており、彼女が走ってきた道より過酷な状況になっていることはもうそこだけで解る様だ。アウリーは簡単にお礼を言うと、その道を行こうとする。流石にその行動には驚いた。彼女の専攻は心の魔術だ。非戦闘魔術であり、身を守ることすらできない。そんな魔術しか使えないのに、行ってどうするつもりなのだ。
「危ないよ!」
 慌てて腕を掴んで止めると、引っ張られた反動で彼女がこちらを向いた。落ち込んでいるかもしれない。泣いているのかもしれない。そんな時にどんな言葉を掛ければいいのか、ジャックには解らなかった。だから、その顔を見たくなかった。が、不意に見えてしまったその顔は、どちらでもなかった。
 決意を固めたような顔だった。何の決意かは解らない。でも。嫌な予感がジャックの胸をよぎった。
「放して下さい」
 いつものおどおどとした様子ではなく、しっかりとした強気な口調だった。それに多少はひるんだものの、手を緩めずにむしろ強く握る。もう恥ずかしいとか、言う勇気がないなどと言っている場合は無かった。彼女の目を真正面から捕える。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷