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エイユウの話~終章~

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「キサカ!」
 思わず叫んだ名前は、身体の持ち主のものだった。なぜよりによってその名前が出てきたのか、その場にいた誰もが驚いた。キースが気絶している間に、キサカがイクサゼルに意識を乗っ取られたことを告げる校内放送が響き渡り、彼が彼でないことは学園内にいる誰しもが、もう知っている情報だ。
 それでも、キースは彼の名前を呼び続けた。
「キサカ!君はそんなに弱いやつじゃないだろう!」
「うるさい」
 そう言って、彼はキースに向かって、水でできた剣を飛ばした。その技は間違いなく彼の物で、キースも練習試合で何度も見ている。実力は均衡している・・・はずだった。
 パンッと派手な音を立てて、その剣は砕け散った。
「な・・・!」
 イクサゼルは驚いた顔でそれを見る。が、すぐ冷静さを取り戻すと、今度は無数の剣を彼に向けて放ってきた。しかし、彼はそれも軽々と破壊する。
 歯を食いしばったイクサゼルは、それこそ空中にびっしりと、水の剣を精製する。しかしそれは放つ前に、クルガルの咆哮により一瞬にして砕かれた。クルガルの魔力はキースのそれに比例する。いままで均衡していた能力が、何故今になってここまで差がついたのか。それは、とても単純なことだった。
 ただ、覚悟が決まったのだ。
 敵わない相手にイクサゼルは恐怖を覚える。後ろに下がると同時に、何かに躓いて転んだ。ひんやりとした手触りと、堅い感触が伝わってくる。イクサゼルは思わず脚元を見た。そこには、瓦礫に交じって先ほどの姿見が入っていた。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷