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エイユウの話~終章~

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 わざと飛ばされたのか。
 キースは身を翻す。が、そのままよろけて倒れそうになってしまった。さっとクルガルが身を入れてくれなければ、死屍累々の仲間と化しているところだ。魔術が使えたことから勘違いしたわけだが、彼は満身創痍なのである。魔物喰らいがなければ、魔術も使えないだろう。
『このまま向かいます』
 進言と同時にクルガルが走り出す。人より嗅覚の鋭い彼女には、この空間はさぞきついだろう。本当に頼りになる契約魔だ。一体目が彼女だったことは、キースにとって非常に幸いなことである。
 イクサゼルが飛んで行った方で、派手に水が吹き上がった。緩衝材として使ったものに違いない。
『スピードを上げます』
 クルガルは身を低くすると、一気に加速した。
 魔物の本気のスピードと言うのは実に速い。そのため、振り落とされないようにキースも必死になった。目を瞑ると悲鳴や建物の崩れる音がより鮮明に耳に届き、押さえつけている恐怖心を膨らませてくる。そのため、彼は必死になって前を向いた。俯いていてはだめだと、心を必死で奮起させる。
 そんな時、彼は赤い目の少年とすれ違った。
 あの瞳はどこかで見た覚えがある。しかし、キースはそれを思い出せなった。
 クルガルと共に目的地に着いたキースの目に、巨大な瓦礫が飛び込んできた、その瓦礫の頂上に、キサカが立っている。制服の一部である腰布が、風で悠然と翻っていた。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷