エイユウの話~終章~
「どういう意味だい?」
「いえ・・・そのままの意味なんですが・・・?」
戸惑った様子で彼女が答える。聞き方が悪かった。導師はそう反省する。
「どうして壊れた?」
「魔力をぶつけちゃったんです。『鍵』の存在を忘れちゃってて」
「何人の?」
「あたしと、アウリーと、キサカです」
可笑しい。導師はあごに手を当てた。多少過小評価してしまっている可能性があったとしても、たったその三人の魔力だけで、封印が壊れるわけがない。
第一、彼女達が「壊れた」と認識したのは何故だ?
それを尋ねると、ラジィは不思議そうな顔で答える。
「動いたんです、解錠せずに、ロッカーが」
それは確かに壊れたと考えてもいいかもしれない。しかし、壊れるはずがないのだ。たかが術師三人の力だ。最高術師のキサカがいたとしても、やっぱりあり得ない。
「何か気になることはなかった?」
「気になる・・・」とラジィが復唱すると、今まで黙っていたアウリーが口を開いた。
「キサカ君が触った途端でした」
「え・・・」と導師が反応すると、ラジィが同意する。
「そういえばっ!あたしたちが何をしても動かないのに、あいつが触れた途端に動いたんです!」
話を聞いた導師の顔が青ざめた。どうしたのかと二人が見ていると、ぼそりと言葉を漏らした。
「まさか・・・彼がゴパスだったのか・・・!」
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷