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エイユウの話~終章~

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「まだ解らない。だから、私も彼がゴパスだと断定できない」
 そう答えた。まだ、前向きな説明だった。それでもやっぱり肯定的にとらえることはできなくて、娘の顔は限界まで歪んだ。もう、他に何と言っても、涙があふれてくるのが、一目瞭然である。
 それを悟ったラジィが、アウリーの肩を持つ。彼女はアウリーに慰めの言葉をかけたが、心の導師を責めるようなことはしなかった。彼の思いはラジィには伝わったし、ラジィはアウリーにも伝わっていると信じていたからだ。
 ラジィに促され、アウリーが導師室を離れる。心配でしばらく見守っていた心の導師が導師室に戻ろうとしたとき、再び声がかかった。
「導師様っ」
 振り返ると、少し離れたところから、ラジィが導師の方を見ていた。距離を縮めず、そこから話を続ける。きっと、アウリーが心配なのだろう。
「牢獄の封印なんですけど、あたしたち、壊しちゃったみたいなんです」
「・・・壊した?」
 しっくりとこない言葉だった。
 あの封印は数百年前にされたものだ。当時の導師は今の導師よりもずっと力が強く、その中でも最高導師であった心の導師がやったと言われている。牢屋の鍵となるあの紋を心の導師が管理しているのは、そこに由来する。
 さらに封印を壊す方法は二つある。一つは紋自体を破壊すること。書いてあるだけだったり、規則的な配列によって成り立っているときに適用される。しかし今回のはしっかりと彫りこまれている。意図的に「削り取る」のなら可能だが、それでは「壊しちゃった」という言葉にはつながらない。
 二つ目は紋に注がれた以上の魔力をぶつけること。息の合った者同士なら、魔力を融合してぶつけるという方法も存在はするが、難しいのは変わらない。まあ、彼らのようにいつも一緒にいるのなら、それもできるかもしれないが。
 それでも腑に落ちない点があり、心の導師は二人の方に向かっていく。待ち切れず、途中で口を開いた。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷