小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

エイユウの話~終章~

INDEX|29ページ/53ページ|

次のページ前のページ
 

「・・・ス君、キース君!」
 懐かしいな。意識の薄い中で、キースは朦朧して思う。呼び名にわざわざ敬称をつけるのは、アウリーしかいない。称号にまで敬称をつけるところは、彼女の几帳面な一部を表すと同時に、弱弱しく感じさせた。しかし、そんなところがキースにとって好印象であり、キサカもきっと好いたのだろう。
「お願いです・・・起きて下さい・・・」
 彼女の涙声で、キースは初めて自分が眠っていることに気付いた。ゆっくりと目を開ける。すると視界いっぱいにアウリーの泣き顔が入ってきた。顔が濡れているのは、彼女の涙のせいのようだ。
「おはよう、なんで泣いてるの・・・」
 つい、彼から笑みがこぼれた。流の導師への感謝があふれる。彼は約束を守ってくれたのだ。身を起こそうとすると、アウリーがすぐに手を貸してくれた。真っ赤になった目と、涙でぐちゃぐちゃになった顔が、すこし愛おしく思える。長年孤独だったので、こんなに思ってくれている人がいてくれることが、キースはうれしかったのだ。
 さっきまでダークブラウンが責め立ててくる厳格な空間にいたのに、今いるところは薄桃色が包み込んでくれる部屋にいた。つまり、保健室だ。薄青色のカーテンが閉められており、キースは「床の色」と「ベッドがある」という二点からそれを判断した。薄いアルコールが匂うのも、手助けになっていた。全体が淡く彩られている中で、アウリーの鮮やかな橙色の髪が、キースの視界に染みる。
 今なぜ自分がここにいるのか。それをキースは思い返す。
 魔物の肉を食べた後、すぐには何も起こらなかった。少量では意味をなさないのか、と導師たちが騒ぎ出した。さらには「これ以上肉を食わせるのは危険だ」という方と、「効果がなければ食べさせるほかない」という二派で分かれてしまう。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷