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エイユウの話~終章~

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2 そして彼は呪われた・1


 導師たちに導かれるままに、キースはある教室に入る。直前にプレートを確認したところ、あまり術師達には関係のない部屋、応接室と書いてあった。落ち着いたブラウンが、キースを迎えてくれる。ワインレッドのソファが、ずっしりと空間に安定感を生みだしていた。
 初めての空間に少し戸惑っていると、明の導師がソファに座ることを勧める。その言葉に甘え、キースは先ほどのソファに座った。そんな彼の前に、一切れの肉が出される。毒性を持つ可能性も否めないところから、この量になったのだろう。ある程度覚悟の決まったキースから言わせれば、こんな量で呪いの効果が出るものかと思わせた。
「緑の導師様、質問、いいですか?」
 聞かれるとまずいことがある、というよりは、聞かれても答えられるものが少ないのだろう。緑の導師は困って、他の導師を見た。緑の導師の答えようによっては、キースの気が変わってしまうかもしれない。独断での返事は危険と感じるのも無理はなかった。が、そんな責任を共有してくれる相手はいない。他の導師はみんな、視線を逸らして回答を逃げた。だからといって答えないわけにもいかず、仕方なく彼は一人で応じる。
「なんだ?」
「ファースは、ファークトリスト・バウエルトンは、二年生ですか?」
 あまりにも関係ない話で、緑の導師はきょとんとした。視線を逸らしていた他の導師たちも、そろってキースを見る。しばらく沈黙があって、我に返った緑の導師が答えた。
「あ、ああ、そうだが・・・」
「ノーマン先輩との面識はありますよね?」
「そうだな、妙に懐いていた。憧れていたのもあったんだろうな」
 曖昧な記憶を引きずり出すように、緑の導師が言った。一体それが何の質問なのか、まだ導師は解らない。しかし、キースは大きく息を吐くと、見ている方が切なくなるほど、さわやかな笑顔を見せた。
「ありがとうございます。覚悟が決まりました」
 ざわめく導師たちに構わずに、彼はいとも容易く、魔物の肉を喰らって見せたのだった。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷